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技術研究所外部評価制度 詳細

平成19年 第4回技術研究所外部評価の結果のご報告

 平成19年4月27日(金)、第4回技術研究所外部評価が実施されました。外部評価委員は岩田一明大阪大学名誉教授を委員長とはじめとする産・学・官計5名の方々でした。今回は平成19年度より開始される新規の研究テーマ6件に絞り、それに対する事前評価として実施いたしました。
 以下に研究テーマに対する委員からのご提言、あるいはご質問と、それに対する担当者の対応を記載いたします。

 
(1)製造現場の形状計測技術向上に関する研究
(研究担当者:高瀬省徳・大西 徹)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○目的は要因分析・対策を含めたロバストな測定(ハード・ソフトを含む)と思われるが、目標は何か。現場測定での注意点を喚起し、改善方法の提案まで行うのか。

→現場環境でより精度の高い測定が実現できるよう指針・改善法を示すことである。

○企業へボールプレートを持って行き、個々の能力比較には興味がある。その際、器差の問題はどうなるのか。

→器差の問題は残る。ただし普及度の高いブリッジ移動型の測定機を対象としており、同型の測定機への水平展開は可能であると考えている。

○マシンチェックゲージの普及度はどの程度か。

→マシンチェックゲージの普及度はまだ低いが、有効に使用している例もある。機会あるごとに宣伝している。

○表題にある製造現場との差異を考えると、温度変動を取り上げていることには十分な意義がある。

→現場測定における測定の留意点についての情報を発信したい。

○現場環境の不確かさは温度以外にもたくさんあるのではないか(例.汚れの不確かさ・ミストの不確かさなど)これをどう考えるか。

→今後MMS(複数測定戦略)により検討していく。また、複数プローブのプローブ方向依存性についても検討していく予定である。

○三次元測定機と専用機との関係で言えば、規格で真円度について記述があるが、円筒度については触れられていない。専用機(真円度測定機)では被測定物の粗さ(評価領域によって)などの影響が現れる。したがって、三次元測定機と専用機との役割分担を明確にすることは意義がある。形状計測を取り上げる場合、測定機の構造に評価対象が偏っていくのではないか。

→幾何形状偏差・評価点数・測定の不確かさなどを考慮し、形態計測(三次元測定機)と形状計測(この例では真円度測定機)の使用上の境界を明らかにしたい。

 
(2)透明材料表面層の物性評価技術に関する研究
(研究担当者:山口 誠)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○使用するセンサは開発しているのか。

→市販品を購入して用いている。

○浸透する表面層の深さはどの程度か。

→300nmの波長で1μm程度である。

○問題解決の目処はついているのか。

→予備試験の結果、ついている。

○レーザ光を可視領域から紫外領域へ移行させて関連性のある結果が得られるか。

→すでに可視領域での複数波長実験で見当はついている。

○最終製品からの要求は加工変質層の評価か、あるいは残留応力の評価なのか、また対象となる材料の種類は限定するのか。

→加工変質層、残留ひずみ等加工法の良否判断がこの開発の主目的であり、特に限定はしていない。また、対応できるすべての材料が対象となる。

 
(3)材料試験技術の高度化に関する研究
(研究担当者:五嶋裕之・藤塚将行)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○樹脂や複合材料では、標準試験片の作成や試験機への取付け、評価手法の確立が困難なように思うので、製品や部品そのものについて実際の利用状態を想定したシミュレーション実験などに特化した方がより特徴を発揮できるのではないか。

→今後の実験計画に反映して行きたい。

○多軸材料試験は静的な試験のみで、動的な試験は考えないのか。

→疲労試験などの動的な試験も考えているが、現在の実験装置では動的な試験に対する耐久性等が未評価であるため、静的な試験から実施して行きたい。

○以前の加工機では位置と速度の制御であったがパラレルメカニズムを利用して、六軸の力、位置、速度の同時制御および各軸の個別の制御(例えば、ある軸のトルクのみを制御)は可能なのか。

→今回各リンクに荷重センサを6個付加し、その情報から計算により六分力を算出し制御する手法を考えており、六軸同時あるいは個別に、位置、速度、力の制御を行う。本手法は予備実験で実現可能との見通しを得ている。

○パラレルメカニズムを利用しなければ装置がより安価にできるのではないか。

→原理的には可能であると考えられるが、従来技術ではかえって構造が複雑になり必ずしもコスト削減にならないと判断している。ご指摘のように現状ではパラレルメカニズムの製作コストの方が高いが、共通部品が多いため、量産化されれば逆転する可能性はある。また、動的な試験時の応答性能を考えると、メカニズムが単純なパラレルメカニズムが有利であると考えている。


○超微小硬さ試験という測定法の性質上、どういった対象に測定をし、どのような結果を得るのかを明確にした方がよいのではないか。

→複合材料のようなサンプル内に不均一な材料物性が偏在する対象の測定は難しいが薄膜や微小配線などの測定については効果的であることを説明し、測定法自体の適用範囲を明確にしていきたい。

○補正が傾きや湾曲について行われることについて、うねりの影響も大きいと考えられるため同様に検討が必要ではないか。

→うねりは傾斜や湾曲の複合的要素であるため、その影響は少なくはないと認識しているがまずは影響を把握しやすい個別の事象について検討を行っていきたい。

○硬さという尺度は工業的にはよく利用されているが応力やひずみなどから得られる他の工業的尺度との相関性などについて明らかにして欲しい。

→本研究内容に一致するものではないが現在所内で行われている研究打合せにおいてもその話題は取り上げられており、重要であると認識している。しかしながら、硬度測定により得られる結果と他の測定法により得られる結果について多くの研究がされてきているものの決定的な解決には到っておらず、今後解明ができればと思っている。

 
(4)硬脆材料の超精密加工に関する研究
(研究担当者:飯塚 保)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○本研究の目標である非球面ガラスレンズの製作は、ハードルが高く実現に困難が予想される。まず、加工対象をマイクロリアクタの溝切削に変更し、フライカットの加工能率の高さを実証して研究の有用性を示す。その後、ターゲットを非球面ガラスレンズに変更しても遅くはない。

→マイクロリアクタ加工の先行研究はエンドミルで行われているが、直線溝ではフライカットの方が加工速度は高い。溝の品質(粗さ・形状)等について調査し、フライカットの可能性・研究の方向を判断したい。

○ガラスレンズの加工より、金型加工にこの技術を生かした方が良いのでは。

→金型材料は耐熱・対摩耗性材料で加工性が悪く、ガラス切削を対象としている。

○脆性クラックは加工面に現れないのか。加工(工具)の入口と出口でクラック発生に違いはあるか。

→加工条件によっては、加工面にクラックが発生する。出口側にはクラックが発生する。

○工具材料の開発まで行えると、理想的な研究になる。逃げ角がゼロ度とマイナス0.5度では切削特性が大きく異なる研究結果があるので、この点も留意してほしい。加工面粗さの種類はRmsか。単位を示してほしい。

→工具材料の開発は可能ならば試みたい。
硬脆材料の切削において、すくい角の影響は多くの論文に記述されており、調査は行っている。
粗さの単位はRyを用いた。

 
(5)加工機械用要素性能の向上に関する研究
(研究担当者:畠山 実)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○案内-駆動方式の組合せ指針作りは企業にとって役に立つ。

→駆動方式やテーブルの使用目的に応じた、指針作りを心がけたい。

○コスト・性能を考慮しなければ目的が収束しない。ターゲットを絞る必要がある。

→ターゲットとしては、超精密加工(10nmオーダの加工精度)を対象とした、小型の加工装置で、比較的安価な価格を想定している。

○可能ならば、設計モデルを構築して部分・全体最適を考慮する。バーチャルモデルで各部の利点を抽出し、設計指針を構築できるモデル作りが望ましい。

→研究を進めて行く上で、設計モデルを類推できるデータが収集できた時に考えたい。バーチャルモデルの作成に関しては、時間的に難しいが、摩擦力のモデルをうまく作ることができれば、伝達関数などを用いたシミュレーションができると思う。

○外乱とは(具体的に)何であるか? 説明がほしい。

→振動(外部・内部(切削抵抗等))である。

○カウンターウェイトは低速送り時には役に立たないのではないかと思われるが。

→本研究でカウンターウェイトを設置するのは、外部からのコモンモードの振動の影響を少なくする目的であるので、送り速度とは直接的な関係はない。

 
(6)温度制御による加工技術信頼性向上に関する研究
(研究担当者:田中清志)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○ウィック開発がメインテーマであるのか。

→液の駆動力を出すウィックを開発することが主たる研究目的である

○切削熱の排出より、リニアモータの排熱、あるいは構造体の熱をとる、PCのCPU排熱などの方がアプリケーションとして適していると思われる。特に工具の温度制御に関しては、非制御体が小さいために難しいのではないか。

→本件を含め色々なアプリケーションを検討したい。簡便な温度コントロール手段として構造体の熱除去に適用していくことも考えている。

○LHPに関しては、理論的な解明がまだ十分でない。そのため、各機関の専門家を含めての研究が必要ではないか。

→その方向で検討している。

いただきました貴重な提言、ご意見を今後の研究の遂行に生かして行きたいと存じます。