加工機械用要素性能向上
1.実施内容
工作機械テーブルの駆動装置として、リニアモータと言う新しい駆動装置の開発が進み、性能が向上し、価格も安くなって来ていることから、いままでボールネジとモータを組み合わせて駆動していた部分が、リニアモータに置き換わるようになって来ています。今までのボールネジ機構では直進方向以外の余分な力(図1)が発生していましたが、リニアモータでは最初から進行方向に力を発生させることが出来るため、余分な力が発生しにくく、高速で移動する用途や、精度が求められる用途などに使われています。
しかし、リニアモータは、ボールネジの様な倍力機構を持たないために、外部からの振動や加工時に発生する切削抵抗などの影響を受けやすく、単純にモータとボールネジの組み合わせと置き換えただけでは、期待された結果が得られなくなってしまいます。本研究では駆動機構と案内機構の組み合わせに着目し、リニアモータのすぐれた特徴を活かしつつ、外部からの振動に弱いと言う短所をカバーできる案内機構との組み合わせを研究しています。
平成19年度は、研究を行うための文献調査や、リニアモータの欠点を解消するような、具体的な案内機構の組み合わせの検討(図2)を行いました。また、実践装置を作成するにあたり、超精密加工をターゲットとした、実験装置の設計と各機械要素の選定を行いました。その中で、今までボールネジとモータを組み合わせた駆動機構では、モータの選択とボールネジの選択を組み合わせることによって幅広い駆動条件を選択できたのに対し、リニアモータでは単純にリニアモータの性能のみで駆動部の性能が決まってしまい、まだ、製品の数が少ないこともあって、選択の自由度が極めて低いことが判明しました。また、リニアモータは高速駆動で用いられることが多いため、従来の2相式の位置決めスケール信号では、周波数が高くなりすぎてしまう可能性が高くなります。そのため、リニアモータではシリアル通信のスケールと組み合わせたものが多くなっていますが、その通信方式はスケールメーカ毎に規格が違っているため、更に選択の幅を狭めてしまっていることが判明しました。
図1 ボールネジの振れ回り
図2 カウンターウェイトによる外乱対策
2.予想される事業実施効果
まだ具体的な実験段階には進んでいませんが、本研究によりリニアモータの弱点である、外部からの振動に弱いという欠点をカバーし、高精度な加工装置を安価に作成出来るようになると考えています。
3.本事業により作成した印刷物等
<KSK-GH19-3> 加工技術高度化に関する研究報告書 (平成20年3月)