【コラム】日本のAIへの取り組み
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2019年6月13日
機械振興協会経済研究所 特任研究員 馬奈木 俊介
1. 挽回できないほど日本のAI化は遅れているのか?
私たち人類は新たな道具や技術を開発し、自分たちの生活圏を拡大させ、豊かな生活を実現してきた。そして新たな技術革新と共に、食糧生産、衛生環境、交通など、私たちの社会・経済活動も大きく変容している。しかし、日本は人工知能(AI)開発において米国のみならず、インド・中国といった新興国にも遅れを取っている。
日本は、水素・燃料電池など先の技術には優れている反面、IT導入など現在経営課題にすべき内容と技術が絡んだ場合への対応は苦手な場合が多い。まさに、AIが技術への投資が新しい分野ではうまく行ってない事例である。なぜ経営判断と技術開発の間の領域に問題があるかというと、専門領域を超えた議論が出来ていなかったからである。
日本企業の経営層には、技術への理解が不足しているとも言われる。米国やヨーロッパ、特にドイツでは博士号を持つリーダーが多く、新技術や組織改編への対応が早い。ここに日本のAI化が遅れた理由があるのかもしれない。それは、挽回できないほど日本のAI化は遅れているのかというとそうではない。遅かれ早かれ導入は必要であり、必要な課題を見つけ、最先端でなくとも導入していくことで十分良いスタートになるというのが本稿の趣旨である。
日本は、水素・燃料電池など先の技術には優れている反面、IT導入など現在経営課題にすべき内容と技術が絡んだ場合への対応は苦手な場合が多い。まさに、AIが技術への投資が新しい分野ではうまく行ってない事例である。なぜ経営判断と技術開発の間の領域に問題があるかというと、専門領域を超えた議論が出来ていなかったからである。
日本企業の経営層には、技術への理解が不足しているとも言われる。米国やヨーロッパ、特にドイツでは博士号を持つリーダーが多く、新技術や組織改編への対応が早い。ここに日本のAI化が遅れた理由があるのかもしれない。それは、挽回できないほど日本のAI化は遅れているのかというとそうではない。遅かれ早かれ導入は必要であり、必要な課題を見つけ、最先端でなくとも導入していくことで十分良いスタートになるというのが本稿の趣旨である。
2. そもそもAIは雇用を奪うのか
AIが雇用を奪うという可能性について非常に多くの議論があった。予測の数値は日本の場合、5%から70%と多様な数値があり幅が広すぎて意味はないが危機感は煽ったままである。雇用代替は失業の危機につながるので興味をひかれやすい。しかし、新技術に人の雇用が取られるというのは昔からある話である。実際の事例を追うと、なくなった職業はエレベーターガールぐらいである。なぜ雇用代替予測から減少すると思われて実際に減らないかというと、取って代わられる可能性はあるが新しく生まれる仕事を見ていないからである。これまでは、雇用は製造業などで減少する分、他の産業が増えて補われるので、これまでは雇用全体が減っていくという傾向にはなっていない。
これからは、違う傾向が出そうである。AI等の新技術を使える人材とそれ以外の人材の収入格差は大きくなるであろう。それについていけない人材は、他の営業力など特筆すべきものがない場合は、厳しい現実が待っているであろう。つまり、新技術に対応できる人材の収入は増加するが、それ以外の層の収入が減少するのである。産業全体の雇用状況において低収入レベル&高収入レベルの両方での層は増えるであろう。その反面、それ以外の中間層の収入は減少している。収入増加している分野での今後の人材育成を考えた場合、新技術に対応できるプロを目指す教育は非常に大事だと言える。つまり数学・統計学まで含めたAI教育である。今の問題は、世界で理系特に工学部の人気が増えているのに、日本は微増に留まり高校卒業時点において情報が伝わっていない可能性が高い。
これからは、違う傾向が出そうである。AI等の新技術を使える人材とそれ以外の人材の収入格差は大きくなるであろう。それについていけない人材は、他の営業力など特筆すべきものがない場合は、厳しい現実が待っているであろう。つまり、新技術に対応できる人材の収入は増加するが、それ以外の層の収入が減少するのである。産業全体の雇用状況において低収入レベル&高収入レベルの両方での層は増えるであろう。その反面、それ以外の中間層の収入は減少している。収入増加している分野での今後の人材育成を考えた場合、新技術に対応できるプロを目指す教育は非常に大事だと言える。つまり数学・統計学まで含めたAI教育である。今の問題は、世界で理系特に工学部の人気が増えているのに、日本は微増に留まり高校卒業時点において情報が伝わっていない可能性が高い。
3. どの方向でAIの分野が活用できるか?
AIとは、大きく3つに分野を分けることが出来る。それは機械学習、深層学習、自然言語である。統計学の活用である機械学習では、既存のインプット、アウトプットの数値データを読み込み、より高い精度でアウトプットの予測が可能になる。この分野は新しいものは技術的には今後は多くはなく、例えば、機械学習を活用した因果性を特定する方法論の開発など如何に多くの機械学習事態を活用した方法論や事例を作っていくかで大事である。経済指標等の数値予測に有用である。
次に深層学習とは、土地利用、病気、機械故障、地図や衛星画像など画像を読み込み予測などの判断に用いるものである。故障の予測や病気の判定に使えるという点で有用である。判定はするが何故そうなるかという理由は限られたケースしか分からないが、精度は高い。
最後に日本語などの言葉を取り込む自然言語である。言葉は日本であれば日本語、英語圏ならば英語と、国の特徴を踏まえたやり方になるので、その国のエキスパートが必要になる。まだ解決すべき課題も多く、今後も研究開発で重要である。そしてそのそれぞれで、これまでは大量のデータ(ビックデータ)が必要であったものが少ないデータ(スモールデータ)でも精度を上げることが出来始めたということが最近の新しい進歩である。
次に深層学習とは、土地利用、病気、機械故障、地図や衛星画像など画像を読み込み予測などの判断に用いるものである。故障の予測や病気の判定に使えるという点で有用である。判定はするが何故そうなるかという理由は限られたケースしか分からないが、精度は高い。
最後に日本語などの言葉を取り込む自然言語である。言葉は日本であれば日本語、英語圏ならば英語と、国の特徴を踏まえたやり方になるので、その国のエキスパートが必要になる。まだ解決すべき課題も多く、今後も研究開発で重要である。そしてそのそれぞれで、これまでは大量のデータ(ビックデータ)が必要であったものが少ないデータ(スモールデータ)でも精度を上げることが出来始めたということが最近の新しい進歩である。
4. 米国が率先できた理由
日本で遅れた理由は、研究者と経営層が人型ロボットのような理想の高すぎる技術開発レベルを目指してしまったことである。そして、その他の大半の人が「どうせそこまで到達しないだろう」と判断し、研究開発投資が増えず、活用も増えなかった。一方、米国では企業によるAI絡みの投資が活発に行われている。
なぜであろうか。米国での経営ではじめた理由を、優先度が高い順から以下に2種類について説明する。
<理由1>
「より良い予測と意思決定」と「データのより良い理解」であった。つまり、よい経営のためにデータを活用しようという理由である。より良い予測や理解を出来る手段が出来た、それならば活用した方がより正しい収益予想ができる。そして、意思決定はそれを生かせば良いと考えたのである。日本のように大きな改革を期待する一発逆転ではなかった。革命でなく漸進的な進歩をそもそも日本企業は得意とするので、この機会はいまからでも活用できる。
例えば、サービス向上や製品設計も同じで、米国のホテル会社などは宿泊に際する顧客満足度と顧客が実際にいつ、いくらで泊まってくれたかというデータを分析し続けた。その結果、より高い価格を維持しながらホテルの稼働率を増やすことに成功している。GOOGLEはじめ、多くの会社も収益の大きな柱は最新AIでなく通常のデータ分析である。簡易なところからハードルを下げてやりはじめると良い。そもそもハイテクに行けば行くほど多くのサービス会社では成功もしていない。
<理由2>
AI活用理由について、次に優先度が高かったのは、「ルーティーン自動化」と「労働費用低下」、続いて「マーケティング向上」と「新規顧客獲得」である。「より良い予測・意思決定」と「データのより良い理解」は人々の生活の質を上げる。「ルーティーン自動化」と「労働費用低下」も、労働時間を減らすことでいずれ将来、週休3日制度が導入されるのであれば、人々の生活にとって良いことである。きちんと働く環境にあって十分満足できている状況であれば、AIは生活をより良く出来る。
このように、通常の効率を上げる道具として活用を少しずつ取り入れていく姿勢が必要だったことが分かる。日本は、ロボット活用において、1万人あたりのロボット数が300を超えているほど、米国よりも進んでいた。今後は銀行の窓口業務など、サービス部門の比較的ルーティーン化が簡単だと思われている分野でも進められるであろう。
なぜであろうか。米国での経営ではじめた理由を、優先度が高い順から以下に2種類について説明する。
<理由1>
「より良い予測と意思決定」と「データのより良い理解」であった。つまり、よい経営のためにデータを活用しようという理由である。より良い予測や理解を出来る手段が出来た、それならば活用した方がより正しい収益予想ができる。そして、意思決定はそれを生かせば良いと考えたのである。日本のように大きな改革を期待する一発逆転ではなかった。革命でなく漸進的な進歩をそもそも日本企業は得意とするので、この機会はいまからでも活用できる。
例えば、サービス向上や製品設計も同じで、米国のホテル会社などは宿泊に際する顧客満足度と顧客が実際にいつ、いくらで泊まってくれたかというデータを分析し続けた。その結果、より高い価格を維持しながらホテルの稼働率を増やすことに成功している。GOOGLEはじめ、多くの会社も収益の大きな柱は最新AIでなく通常のデータ分析である。簡易なところからハードルを下げてやりはじめると良い。そもそもハイテクに行けば行くほど多くのサービス会社では成功もしていない。
<理由2>
AI活用理由について、次に優先度が高かったのは、「ルーティーン自動化」と「労働費用低下」、続いて「マーケティング向上」と「新規顧客獲得」である。「より良い予測・意思決定」と「データのより良い理解」は人々の生活の質を上げる。「ルーティーン自動化」と「労働費用低下」も、労働時間を減らすことでいずれ将来、週休3日制度が導入されるのであれば、人々の生活にとって良いことである。きちんと働く環境にあって十分満足できている状況であれば、AIは生活をより良く出来る。
このように、通常の効率を上げる道具として活用を少しずつ取り入れていく姿勢が必要だったことが分かる。日本は、ロボット活用において、1万人あたりのロボット数が300を超えているほど、米国よりも進んでいた。今後は銀行の窓口業務など、サービス部門の比較的ルーティーン化が簡単だと思われている分野でも進められるであろう。
5. 日本の技術開発戦略は?
日本の製造業は特化した熟練の技術に頼っていた。しかし、データ活用によりシステム化できないと思われ、(ロボット化は出来たけれども)AIで大枠や長期の流れ、将来を予測しようとはならなかった。また、電気自動車系等では、アプリをアップデートすれば、瞬時に最新のハイテクに更新できる。この技術キャッチアップの簡易さにより、技術すりあわせの難しさゆえに日本が強みを持ってきた自動車産業が競争力を失うと考えられてきた。そのため、日本の自動車会社はハイブリット自動車で、その次がプラグイン・ハイブリット自動車、最後はまだ先ではあるが燃料電池自動車への移行が良いと考えていた。しかし想定以上に電気自動車の技術開発のスピードが早く、日本が遅れを取ってしまった。そのため現状やや遅れながらも対応している。
対する中国は、AIの中のネットワーク分析に力を入れている。なぜ中国が強いかというと、AIは全ての情報をまとめて自分が理解する中央集権だからである。米国は、昔ながらのエクスパートシステムをより良くすることに特化して、ネットワーク分析を行っている。この5年のトレンドは、量子コンピューティングを含めた個別的技術応用の方にシフトしている。
特許数・論文数では日本は完全に負けている。米国と中国はビジネスが市場をとったもの勝ちの文化であるため、まずトライアルが出来る。自動運転自動車も、まず走行し、事故が起こるたびに調査報告書をまとめ次に生かし、それを許す文化である。日本のようなガイドライン文化の国は、まずルールを決めてから競争に入る。しかし、ルールを決めるのに延々と時間がかかり。ヨーロッパもガイドライン文化ではあるものの、ガイドラインを世界に普及させようというISO的なやり方が色濃い。そのため自分で標準化して特許を取ることが良いとされている。日本もガイドライン主義で行くなら、欧州的な方法が良いのであるが、メーカーやコンサルタントがソフトサイドの標準化対応が出来るとも現在では言えないので、ビジネス文化の方にシフトすることも検討の余地がある。
日本はGDP世界3位で、市場は大きい。日本語に特化したAI活用の自然言語は、今後も技術開発が進められる可能性が高い。AI研究では、多数の個別の数理学者に個々では小さな研究費を渡し、頻度は少なくとも個別レベルでは大成功すれば良いというのが現在の日本が勝ちうる戦略である。産業界レベルではデータ規模の経済性が大きいと考えられるので、優れたデータを持っている分野はAIを更に活用して収益につながるであろう。その一方で、データが少なくとも専門知識を介した個人事業者も十分活用できるスモールデータの利用も活発になるであろう。
あくまで、今後の政策課題としては、生産性向上にきちんとAIを活用する、企業単位だけではなく工場単位まで落とした議論をできるかどうかが大切である。AIにも失敗は多いが、最後はそれを使う人の判断が大事である。
対する中国は、AIの中のネットワーク分析に力を入れている。なぜ中国が強いかというと、AIは全ての情報をまとめて自分が理解する中央集権だからである。米国は、昔ながらのエクスパートシステムをより良くすることに特化して、ネットワーク分析を行っている。この5年のトレンドは、量子コンピューティングを含めた個別的技術応用の方にシフトしている。
特許数・論文数では日本は完全に負けている。米国と中国はビジネスが市場をとったもの勝ちの文化であるため、まずトライアルが出来る。自動運転自動車も、まず走行し、事故が起こるたびに調査報告書をまとめ次に生かし、それを許す文化である。日本のようなガイドライン文化の国は、まずルールを決めてから競争に入る。しかし、ルールを決めるのに延々と時間がかかり。ヨーロッパもガイドライン文化ではあるものの、ガイドラインを世界に普及させようというISO的なやり方が色濃い。そのため自分で標準化して特許を取ることが良いとされている。日本もガイドライン主義で行くなら、欧州的な方法が良いのであるが、メーカーやコンサルタントがソフトサイドの標準化対応が出来るとも現在では言えないので、ビジネス文化の方にシフトすることも検討の余地がある。
日本はGDP世界3位で、市場は大きい。日本語に特化したAI活用の自然言語は、今後も技術開発が進められる可能性が高い。AI研究では、多数の個別の数理学者に個々では小さな研究費を渡し、頻度は少なくとも個別レベルでは大成功すれば良いというのが現在の日本が勝ちうる戦略である。産業界レベルではデータ規模の経済性が大きいと考えられるので、優れたデータを持っている分野はAIを更に活用して収益につながるであろう。その一方で、データが少なくとも専門知識を介した個人事業者も十分活用できるスモールデータの利用も活発になるであろう。
あくまで、今後の政策課題としては、生産性向上にきちんとAIを活用する、企業単位だけではなく工場単位まで落とした議論をできるかどうかが大切である。AIにも失敗は多いが、最後はそれを使う人の判断が大事である。
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