ガラス切削における工具摩耗の研究(平成23年度研究概要)
1.背景及び目的
スマートフォンと呼ばれる携帯電話に情報端末機能を融合させた商品の販売が急速に拡大しています。これらにはタッチセンサ付のディスプレイが必須であり、ガラスと樹脂の積層材料や樹脂にガラスの主成分であるSiO2を融合させた材料などが用いられています。ガラスの延性モード切削において、クラックフリーな加工面はフライカットで実現可能であり、加工能率も旋削と比較すると数十倍となります。しかしながら、工具寿命は金属加工と比較すると短く、ガラスの延性モード切削の実用化への障壁となっています。特に、ダイヤモンド工具によるガラス切削において、摩耗原因の特定はされておらず、深刻な問題となっています。
2.研究概要
ダイヤモンド工具によるガラスの延性モード切削で、工具の摩耗メカニズムは明らかになっておりません。工具を摩耗させている要因を解明し、工具摩耗の抑制を実現すればガラス加工の実用化が加速すると考えます。切削加工の場合、一般に工具と工作物は常に接触しています。この接触状態を観察容易な摩擦実験で再現し、摩耗量の測定、摩擦部分で発生している各現象の観察・解明を行います。初年度はガラスと工具材料の摩擦摩耗実験を行うことにより、ガラスと工具の間に生じている現象の解明を行います。次年度以降において、工具摩耗を抑制する手法の構築を目指します。
図1 摩擦実験に使用する人造ダイヤモンド
図2 摩擦実験に使用するエアタービンスピンドル
3.期待される効果
ガラスを加工する際に生じるダイヤモンド工具の摩耗は、ガラスを使用した機器の生産にとって大きな障壁です。工具摩耗のメカニズムにおいては、ガラスと樹脂の複合材料やガラス繊維強化樹脂などにおいても同様であると考えられます。ガラス加工における工具摩耗の抑制は、光学機器、理化学機器、医療、IT産業などの幅広い分野に影響を与えます。そのため、本研究の成果は社会への貢献が大きいと考えます。