工業用有機材料試験技術の高度化に関する研究(平成22年度研究概要)
1.実施内容
プラスチックやゴム等の有機材料は工業的に重要な材料の一つです。しかし有機材料は化学物質・光・熱・外部応力等により、当初想定しなかった劣化や破壊現象を起こすため、材料の劣化・破壊に関する優れた評価システムの開発は重要です。また材料の試験・分析法の多くは、試験・分析の対象物を、損壊(例:粉砕、溶解など)させる必要があるため、製品に使用中の部品や、文化財等の希少材料など、実際に損壊させることのできない対象物に対する、非破壊で非接触な評価法の確立が強く求められています。そこで本研究は有機材料の一つであるポリカーボネート(PC)樹脂を利用し、次の2つの観点より工業用有機材料に対する試験技術の高度化を目指しました。
(a)有機溶剤劣化させたPC樹脂の繰り返し振動疲労試験および破断面観察
PC樹脂をアセトン等の有機溶剤にさらすと強度が低下します。PC樹脂のASTM試験片を繰り返し振動試験により破壊させ、その破断面を観察すると、複数の破壊の起点が観測されるなど、興味のあるデータを得ることができました。
図1 ASTM TYPEⅠ試験片
図2 溶媒劣化させた試験片の振動試験後の破断面
(b)分光分析および多変量解析等を利用したPC樹脂の非破壊・非接触的評価
PC樹脂に機械的な応力を与えると歪みなどが発生し、材料破壊につながります。本研究では、PC樹脂の表面に与えた応力に対する効果を、赤外分光分析(反射法)と多変量解析(主成分分析)を用いて、非破壊・非接触的に評価できることを見出しました。
図3 機械応力を与えたPC樹脂の評価
2.予想される事業実施効果
上記(a)のような工業用有機材料の疲労試験や破断面に関する評価法およびその結果は、製品の品質管理において、より正確かつスピーディーに問題解決するための知見としての活用が期待できます。また(b)のような工業用有機材料の非破壊・非接触的評価は、製品の寿命予測・破損予測につながる基盤的方法論の一つとして、産業界での利用が期待できます。
3. 本事業により作成した印刷物等
(1)報告書
<KSK-GH22-2-3> 計測技術高度化に関する研究-工業用有機材料試験技術の高度化に関する研究-(平成23年3月)(3.95MB)
(2)国際会議・国内学会発表
No | 題目 | 発表者名 | 発表会名 | 発表日 |
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1 | 硬さ試験を行なった高分子材料の赤外分光分析(Infrared spectral analysis of polymer materials after hardness test) | 川口聖司 | International Conference on Polymer Analysis and Characterization (ICPAC) & 15th Symposium on Polymer Analysis in Japan | H22.12.10 |