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cBN工具によるガラス材料の延性切削に関する研究(平成15年度研究概要)

1.目的

代表的な硬脆材料であるガラス材料を対象にし、当研究所で開発した超精密切削加工機を用いて延性切削加工の実用化を目標に研究を行っております。光学レンズ等に用いられるガラスは、超精密切削加工機を用いれば最小切取り厚さが0.1μm程度で延性切削は可能ですが、高価なダイヤモンド工具の激しい摩耗によって実用化を阻まれております。

2.概要

ダイヤモンド工具を用いた光学ガラスBK7への延性切削加工の研究において、加工雰囲気を大気から窒素およびアルゴンガスに置換して工具寿命を10倍以上に延長することが出来ましたが、コスト的に実用化を検討できる段階には達しておりません。無酸素雰囲気で工具寿命が延びる研究結果より、ガラスよりはるかに硬いダイヤモンド工具が摩耗する原因は機械的な摩擦摩耗ではなく化学反応による摩耗が支配的であると考えられます。そこで、cBN(cubic Boron Nitride:立方晶窒化ホウ素)を工具として延性切削加工を行ないました。図1はガラス円盤(直径25mm、厚さ4mm)のcBN工具による延性切削加工面(中心部分)のレーザ顕微鏡写真です。延性切削特有の亀裂の発生していない切削痕が観察できます。図2はcBN工具先端(すくい面)を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像です。延性切削の特徴である流れ型のカールした切屑が付着しております。加工後のcBN工具逃げ面は、ダイヤモンド工具とは異なり逃げ面には摩耗の痕跡が見られませんでした。今後はcBN工具の可能性について、加工面性状を含めた評価を進めます。

3.期待される成果

本研究において、超精密切削加工機を用いて光学ガラスBK7へcBN工具による延性切削加工を行うことが出来ました。今後は工具の長寿命化を主目的に研究を進め、ガラスレンズの切削仕上げ実用化に向けた研究に取り組みます。

加工面中心部(レーザ顕微鏡画像)

図1 加工面中心部(レーザ顕微鏡画像)

cBN工具刃先 走査型電子顕微鏡画像

図2 cBN工具刃先 走査型電子顕微鏡画像