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「世界的な変動期におけるドイツ中小企業のイノベーション活動 ―ベンチャー企業、そして労使関係・HRMの観点からの報告―」

(一財)機械振興協会経済研究所主催 第471回機振協「世界的な変動期におけるドイツ中小企業のイノベーション活動 ―ベンチャー企業、そして労使関係・HRMの観点からの報告―」セミナー開催報告 オンデマンド配信あり
開催日時 2024年6月17日(月)13:30~15:00
場所 WEBシステムにより開催(Zoom)
テーマ 「世界的な変動期におけるドイツ中小企業のイノベーション活動 ―ベンチャー企業、そして労使関係・HRMの観点からの報告―」
講師 明治大学 経営学部 教授 石塚史樹 氏    機械振興協会経済研究所 調査研究部 研究副主幹 森直子
内容  2024年6月17日(月)にWebシステムより、第471回機振協セミナー「世界的な変動期におけるドイツ中小企業のイノベーション活動―ベンチャー企業、そして労使関係・HRMの観点からの報告―」を開催しました。当日は2名の講師が講演を行い、うち1名は明治大学経営学部教授の石塚史樹氏にお願いしました。また講師兼モデレーターとして機械振興協会経済研究所調査研究部研究副主幹の森直子が務めました。当日は、60名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。


【講演内容】

 ドイツの中小製造企業は国際競争力が高いことで知られている。特に “Mittelstand(ミッテルスタンド)”や、とりわけ“Hidden Champions(隠れたチャンピオン)”と呼ばれるニッチ市場のトップとなる中堅・中小企業は、独自の強みを発揮し競争力が高いことで知られ注目を集めている。本講演では、ドイツの中小企業におけるイノベーション活動と、そこに関わる労使関係およびヒューマンリソース・マネジメントについて議論を行い、日本の中小製造企業への教示を得ることを目的としている。そのため、本公演では、最初にドイツの自動運転技術ベンチャー企業LAKE FUSION Technologiesの事例を紹介し、その後ドイツ中小企業のイノベーション活動に関するデータ分析を行った。
 事例調査では、ドイツ南部の小さな町マルクドルフに本社を置くベンチャー企業LAKE FUSION Technologies GmbHを紹介した。同社は自動運転の衝突回避システムの開発を行っており、エアバス社の元従業員4名が50代半ばで2018年末に起業したユニークな企業である。また同社は高い技術力と信頼性の高いソフトウェアが強みとされ、自動車メーカーや部品サプライヤーとの取引が拡大するなど飛躍的な成長を遂げている。同社の高成長の背景には博士号を持つ外国人を多く獲得できている点があり、製品の基礎となるアイディアは創業者メンバーが発案するものの、研究開発は社内チームで行われていた。その一方、事業の急拡大に合わせた資金調達には課題があり、ドイツ国内のベンチャーキャピタルや公的支援制度では十分な支援が集まらず、アメリカの個人投資家から支援を受けていた(2024年6月にドイツの防衛事業と自動車事業の大手 ライン・メタルの子会社から25%の出資を受けた)。
 データ分析では、ドイツ中小企業のイノベーション活動に関する計量分析を行った。マンハイムイノベーションパネル(MIP)のデータを用いて、従業員代表委員会の設置や従業員提案制度の有無など、労使関係や人的資源管理の指標がイノベーションにどのような影響を与えているかを検証した。分析の結果、R&R投資の頻度やR&D費の売上シェアなど容易に想定されえる指標がイノベーションに正の影響を与えていることが確認された他、従業員提案制度の存在がラディカルイノベーションに有意な正の影響を与えている可能性が示された。一方で、製品やサービスのイノベーションに対しては、労使関係や人的資源管理の指標は有意な影響を示さなかった。
 最後にデータ調査分析を踏まえ、本研究の限界と今後の課題について言及した。対象業種を絞ったために分析したサンプル数が少なかったことや、定量データだけでは因果関係を説明できないことがあった。そのため、今後は現地での聞き取り調査を行い、変数間の関係をより深く理解する必要がある他、ドイツ中小企業の労使関係と人的資源管理の特徴を、イノベーション活動との関連でさらに実証的に研究していく必要性を強調した。

 講演後は質疑応答が行われ、「フラウンホーファー研究機構の支援」に関する解釈についての質問があった。また、データ分析においてラディカルイノベーションと製品やサービスのイノベーションで異なる結果が出たことについて、従業員が現場で見つけているような暗黙知がラディカルイノベーションの源泉となっている可能性が示された。さらに、創業期では経営者によるトップダウン方式が有効である一方、創業期以降は長年の知識の蓄積がある種のボトムアップ的に効果を発揮してラディカルイノベーションに対し有効である可能性が議論され、盛況裏に終了した。



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