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「わが国における建物一体型太陽光発電(BIPV)関連産業の形成条件:太陽光発電(PV)ガラスに搭載する太陽電池の動向とBIPVとの関係を踏まえて」

(一財)機械振興協会経済研究所主催 第476回機振協「わが国における建物一体型太陽光発電(BIPV)関連産業の形成条件:太陽光発電(PV)ガラスに搭載する太陽電池の動向とBIPVとの関係を踏まえて」セミナー開催報告 オンデマンド配信終了
開催日時 2024年9月24日(火) 14:30~16:00
場所 WEBシステムにより開催(Zoom)
テーマ 「わが国における建物一体型太陽光発電(BIPV)関連産業の形成条件:太陽光発電(PV)ガラスに搭載する太陽電池の動向とBIPVとの関係を踏まえて」
講師 講師:公益財団法人未来工学研究所 政策調査分析センター 主席研究員 多田 浩之 氏、シニア研究員 井上 敬介 氏                                       モデレータ:機械振興協会 理事 兼 経済研究所 所長代理 北嶋 守
内容  2024年9月24日(火)にWebシステムより、第476回機振協セミナー「わが国における建物一体型太陽光発電(BIPV)関連産業の形成条件:太陽光発電(PV)ガラスに搭載する太陽電池の動向とBIPVとの関係を踏まえて」を開催しました。講師は、公益財団法人 未来工学研究所政策調査分析センター主席研究員の多田浩之氏並びにシニア研究員の井上敬介氏にお願いしました。またモデレータは、機械振興協会理事・経済研究所所長代理の北嶋守が務めました。当日は、63名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。


【講演内容】

 本講演は、日本のBIPV関連産業の課題について、普及が進む欧州・中国のBIPV関連産業との比較を通じて明らかにし、政策的提言をするものである。
 本講演の冒頭でBIPVの定義と世界の市場動向を紹介した。BIPVの「標準的」な定義は存在しないものの、一般的には欧州規格EN 50583に基づいており、建物の屋根や外壁などの建材に太陽電池を一体化させたものを指す。世界のBIPV市場は2025年に約110億ドル規模に達すると予測されており、用途別では屋根型が最も大きなシェアを占めている。今後は、外壁など垂直面での用途が注目される。地域別では、中国を含むアジア太平洋地域が最大の市場となっている。世界全体では、住居用、商業用、工業用それぞれの建物で同程度の市場規模になっているものの、欧州では住居用建物が大きいことが特徴である。
 次に、欧州と中国のBIPV推進の背景について解説した。欧州では、気候中立目標の達成と建物エネルギー性能指令の改正を受けてBIPVの導入が推進されていた他、歴史的建造物の景観保護の観点から、BIPVが有効な手段と位置付けられた。一方、中国では、既存建造物のエネルギー消費が高いことから、省エネルギーと排出削減を目的としてBIPVの導入が求められており、2009年以降、補助金政策が様々な地域で実施されていた。
 一方、国内企業のBIPVの動向を見ると様々な課題があることがわかった。技術的に安定したシリコン系太陽電池を使ったBIPVモジュールは実用化されているものの、欧州市場への参入に向けて変換効率を落とさないカラー化が課題となっていた。一方、ペロブスカイト型太陽電池は耐久性問題やフィルム型を建物内部から貼り付ける実用方法の考案、可視光透過型では変換効率及び耐久性の実証が課題であった。またBIPV製品共通の課題として、交換を容易にする構造の実現や発電効率が挙げられた。さらに、大学の研究者へインタビューを行ったところ、わが国が原料や基礎研究で先行しているペロブスカイト系への期待が語られるとともに、BIPV技術実用化への課題として、耐久性の確保や原料に含まれる鉛の扱い、大規模投資による一貫生産体制の構築などが指摘された。
 BIPV関連特許の分析結果も示された。保有数では米国と韓国、欧州が多く、これらは社会実装面に重きを置く特許が多い一方、中国や日本はPVモジュールの技術革新に重きを特許が多い傾向にあった。また、日本が学ぶべきところの多い欧州ではBIPVをフラッグシッププロジェクトと位置付け、大規模な研究開発プロジェクトを実施するとともに規制の圧力も利用して、競争力向上につながる体系的なイノベーションを実現していることが紹介された。
 本講演では最後に、日本におけるBIPV関連産業の形成条件と提言が示された。技術的課題では、太陽電池と建築物の寿命のミスマッチ対応、耐久性と変換効率の向上、低コスト化を挙げた。また産業化に向けた課題としては、インセンティブ付与による需要喚起が重要になることを指摘した。これら課題を受け、本講演ではオールジャパン体制での産業育成の重要性を挙げる一方、国の関与は方向性設定と一部経費負担に留めるべきことを提言した。

 講演後は質疑応答が行われ、米国と韓国のBIPV関連産業の動向に関する質問の他、日本の課題として、第一に、政府の関与は大きな方向性の設定と一部経費の負担に留め、実務は事業者に任せるべきであること、第二に、需要喚起への取り組みをより積極的に行うことなどが指摘された。さらに、欧州ではBIPVを産業化する際に建物の構造設計や規制対応、教育訓練、資格制度の整備までワンパッケージ化されていることなども日本はみならうべきであるといった議論がなされ、盛況裏に終了した。


動画・資料の掲載は終了いたしました。