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「日本の蓄電池製造装置産業の可能性と課題について ~工作機械、半導体製造装置との比較を踏まえて~」

(一財)機械振興協会経済研究所主催 第474回機振協「日本の蓄電池製造装置産業の可能性と課題について ~工作機械、半導体製造装置との比較を踏まえて~」セミナー開催報告 オンデマンド配信あり
開催日時 2024年8月23日(金) 13:30-15:00
場所 WEBシステムにより開催(Zoom)
テーマ 「日本の蓄電池製造装置産業の可能性と課題について ~工作機械、半導体製造装置との比較を踏まえて~」
講師 講師:日鉄テクノロジー株式会社 サステナビリティソリューション事業部 産業・資源循環技術部            調査第一室 室長 大内 邦彦 氏                                       モデレータ:機械振興協会 理事 兼 経済研究所 所長代理 北嶋 守
内容  2024年8月23日(金)にWebシステムより、第474回機振協セミナー「日本の蓄電池製造装置産業の可能性と課題について ~工作機械、半導体製造装置との比較を踏まえて~」を開催しました。講師は、日鉄テクノロジー株式会社サステナビリティソリューション事業部産業・資源循環技術部調査第一室室長の大内邦彦氏にお願いしました。またモデレータは、機械振興協会理事・経済研究所所長代理の北嶋守が務めました。当日は、103名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。


【講演内容】

 近年日本政府は、カーボンニュートラル実現の鍵として蓄電池を位置づけており、蓄電池産業の競争力強化に向けた政策を強化している。しかし、蓄電池を支える蓄電池製造装置についてはその認識が遅れており、政策的支援がようやく本年度から本格化することとなっている。
 本講演は、日本のリチウムイオン電池(LIB)の製造装置産業の課題について、中国や韓国のLIB製造装置産業との比較や、工作機械や半導体製造装置の歴史との比較を通じて明らかにするものである。
 本講演の冒頭でリチウムイオン電池(LIB)の製造工程と必要な装置を紹介した。リチウムイオン電池(LIB)の製造工程には攪拌、塗布、乾燥、圧延・切断、捲回・積層、組立、注液、検査があり各工程では様々な装置が使用されている。なかでも、塗布、圧延・切断、捲回・積層の工程では高度なウェブハンドリング技術が重要となることを説明した。
 次に、リチウムイオン電池(LIB)の製造装置の世界市場規模、出荷額の推移と予測について解説した。このうち上位企業のランキングでは、中国企業が上位を占め、日本企業はランク外である。また日本企業は近畿地方に多く集中し、中堅中小企業が中心である一方、中国・韓国企業は大規模で、複数工程の装置を製造できる企業が存在する。
 さらに、中国・韓国企業の強みとして、創業者による大胆な経営判断、デジタル化への対応力、資金調達力、需要に応じた生産能力拡張、標準品の量産によるコストダウン、政府からの支援などがある。その一方、日本企業の強みは基礎研究力、ものづくり技術、ユーザーニーズへの対応力などが挙げられる。しかし、デジタル化や自動化への対応の遅れ、資金調達の制約、生産能力拡大の慎重さなどが弱みとして指摘することができる。
 本講演では最後に日本企業のシェアが高い工作機械や半導体製造装置と比較することで日本のリチウムイオン電池(LIB)の製造装置産業の今後の方向性について検討を行った。その結果、工作機械や半導体製造装置の成功要因として、急成長するユーザー需要への対応、海外市場開拓、先行事例からの学習、先進技術への対応、政府支援制度、業界団体の役割、デジタル技術の活用、装置の標準化などが挙げられるが、これらの点で蓄電池製造装置産業はまだ遅れをとっているため、同様の取り組みが必要と考えられる。また工作機械や半導体製造装置産業が発展した時期の外部環境と比べ、蓄電池製造装置産業の発展時期が遅れたこともあったと指摘している。

 講演後は質疑応答が行われ、中国・韓国製のリチウムイオン電池(LIB)の火災の原因に関する質問の他、今後日本の装置産業のシェア拡大に向けサービスの充実が重要なポイントとなる可能性、日本が高い競争力を持つロールなどのコア部品で標準化を行うことで競争力が維持できることなどが議論され、盛況裏に終了した。



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【資料】