機械振興賞　受賞者 業績概要詳細

電子秤は、地球の重力加速度が測定物に及ぼす力を利用して、重量を測定する機器である。しかし、洋上の漁船では船体の揺れによる加速度が加わるため、魚の重量を正確に測定することは困難であった。魚種によっては厳格な漁獲制限が設けられているため、船上で魚の重量が正確に測定できることが望まれる。揺れに対応した海外製の電子秤は存在するが、価格が高価で故障しやすいという問題があり、故障時には国内では修理できず、長い修理期間を要していた。 本業績では、重量が既知（例えば10kg）である基準重りと秤を装置内に設置し、その基準重りの測定値から揺れによる加速度の影響を求めて、被測定物の測定値を校正する方法を考案した。しかし、船の揺れは単純な上下動ではなく複雑であるため、単純な補正計算では正確に校正することは困難であった。基準重りの測定値と被測定物の測定値との相関に着目し、試行錯誤を重ねることで、最適な補正計算式を導き出した。また、漁船ではエンジンの振動により秤内部の部品が共振し、測定に影響を与える問題があった。これを防ぐために、エンジンの回転数全域で共振を抑制する構造設計を採用し、安定した測定を実現した。