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機械製品に対する安全要求と設計方法

第8回 個別安全要求と設計-圧力システム-

圧力システムとは、圧力容器、配管、ホース、バルブ、レギュレータ、フィルタ、その他大気圧以上の圧力を持つ部品から構成されているものです。図1に圧力システムの例としてガスプラントを示します。圧力システムの最大の危険事象は爆発です。爆発が起こる危険性は、圧力、容積、使用材料、耐用年数等により左右されます。爆発の結果、火災や毒性のあるガスの発生による汚染、使用者の死傷や負傷などが起こりえます。爆発以外では、タンク、配管、およびフレキシブルホース等の破損による有毒物質、腐食性物質、可燃性物質の漏洩により火災や汚染が広がる可能性があります。

-要求項目-

重大な危険を含む圧力システムには、十分な余裕を持った設計が必要です。そのため、「リリーフ圧力」「圧力調整機器の圧力」「装置の使用される温度」等の最大値により導かれた「最大設計圧力(Maximum Design Pressure:
MDP)」により安全設計を行う必要があります。

-設計方法-

  • 安全係数は、MDPに対してかける。(設計圧力=安全係数×MDP)
  • MDPをリリーフバルブ、調圧弁等を用いて設定している場合は、2故障許容設計とする。
  • 過渡の圧力から圧力システムの破壊・破裂を守るために、部品に対してブリード(蒸気の放出)やベント(気体の放出)
  • ラインを設ける。
  • 圧力システム全体が破壊しないように、システムを部分的に隔離した設計とする。
  • 作動圧力状態で、最大作動温度における構造荷重、加速度、衝撃、歪、破損、漏洩に耐える設計とする。

(1) 圧力容器

 圧力容器とは、主として気体または液体を加圧保管するために設計された下記のいずれかの条件に該当する容器です。
  • 理想気体の断熱膨張に基づいて、45.0kg以上のトリニトロトルエン(TNT)に相当する蓄積エネルギーを有する容器。
  • 放出された場合に危険となる100.0kPaを超える気体または液体を入れる容器。
  • 690.0kPaを超えるMDPとなる気体を入れる容器。

-設計方法-

  • 複合圧力容器は、十分なストレス破壊寿命の評価を行う。
  • 非破壊検査(Non Destructive Examination:NDE)は、耐久試験後の溶接部の検査を含む。

(2) デュワー

 デュワーは低温に維持して使用されるため、前項の圧力容器の設計要求を満足すると共に、以下の要求を満たす必要があります。

-要求項目-

  • 容器は、爆発前に気体をリークさせるLBB(Leak Before Burst)設計とする。
  • 容器は、漏れが起きた場合の圧力リリーフ機能を有する。
  • MDPを制御する圧力リリーフ装置は、使用条件かで動作の検証を行う。
  • 圧力容器の耐圧試験は、MDPの1.1以上で行う。
 さらに、デュワーを低温に維持するための装置の設計は、以下の要求を満たす必要があります。

-要求項目-

  • 低温装置は、大幅な温度差による収縮や膨張に耐える設計を行う。
  • 圧力容器の内部と外部の間には、熱遮断を維持するための空間を設ける。
  • 圧力リリーフディスクからの放出物が、隣接する装置等にあたらないようにする。
  • 圧力リリーフディスクは、設定圧力の±5%以内の精度を保つ。
  • リリーフバルブの出口には、汚染物質の侵入を防ぐための保護装置をつける。
  • リリーフ装置は、凍結防止のため低温のデュワーからできるだけ離す。
  • 遮断バルブは、リリーフバルブラインにつけない。

(3) 圧力ライン、フィティング、コンポーネント
-要求項目-

圧力ライン、フィティング、コンポーネントの安全係数の参考値を表1に示します。使用状況に応じて選定してください。
表1 安全係数の参考値
分  類対 象安全係数
1圧力ライン、フィティング外径3.8cm未満1.5以上
外径3.8cm以上1.5以上
フレキシブルホース全品1.5以上
2ベロウ、ヒートパイプ全品1.5以上
3バルブ、フィルタ、調整器、センサ等全品1.5以上
4他の加圧状態になるコンポーネント全品1.5以上

-設計方法-

(1)ライン、チューブ、ホース
  • 圧力ラインは、適切に固定・支持し、ラインのもれや破壊の原因となるたわみ、磨耗、変形を最小に抑える。
  • 全ラインは独立に固定、もしくは支持する。
  • ベントラインや圧力リリーフラインは、使用者が被害を受けない配置とする。
  • 圧力ラインやフレキシブルホースは、シールドするか保護する。
(2)フィティング
  • 金属フィティングやスリーブ、コネクタの選定には、耐応力腐食特性を考慮する。
  • ネジ部を持つフィティングやコンポネントは、設計段階で締め付けトルク値を規定すると共に、組立て時に作業者が確認できるようにする。
(3)バルブ類
  • 誤動作で開いて流量容量を超える可能性がある部品には、流量制御器をつける。但し、ベントやリリーフ装置には流量制御器をつけない。
  • 圧力リリーフバルブは、圧力レギュレータが作動できないときや、開いたまま故障するときに備えて設置する。

(4) 流れによる誘導振動

 図2に示すような比較的長いフレキシブルホースは、流れや圧力の脈動による振動力により、ホースの固定がはずれることがあります。この場合、周辺の装置や構造に被害を与え、さらには人的な被害が起きることがあります。

-要求項目-

フレキシブルホースは、流れによる誘導振動を起こしてはいけない。

-設計方法-

  • フレキシブルホースは、全長の最大5%までのたるみを持たせる。
  • フレキシブルホースは、ホース結合部にホース抑えを取付けて構造部材に固定する。
  • フレキシブルホース抑えは、自由状態で抑えの可動距離を基に計算した衝突力より50%以上強度を上げる。
  • 摩擦やすり傷による損傷を避けるために、フレキシブルホースと一体化した被覆をつける。