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機械製品に対する安全要求と設計方法

第6回 個別安全要求と設計-構造-

1.強度設計

(1) 安全余裕

 製品を使用する全ての期間において、予測される最大荷重に対して、製品が故障しないように設計する必要があります。そのため、以下に示すような適切な安全余裕(MS:Margin of Safety)を確保するこが求められます。

MS=設計終極荷重/予想される最大荷重-1>0
(2) 安全係数

 製品の終極荷重とは、製品に力を掛けていって、製品が破壊、座屈にいたる直前の荷重です。ここで、予想される最大荷重が製品の終極荷重と等しいかそれ以上だとすると、製品は破壊に至ることになります。そのため、製品を設計するための設計終極荷重は、以下の安全係数を適用して、製品の破壊に対してのマージンを確保する必要があります。安全係数は、製品により異なった値となりますが、1以上1.25以下程度を目安にしてください。

設計終極荷重=安全係数×予測される最大荷重
(3) 応力集中係数

 均一でない構造部位、穴等には応力が集中します。そのため、左記の部位には下記の応力集中を考慮して強度の評価を行う必要があります。このときの応力集中係数は、機械工学便覧(α3材料力学、第7章)等を参考にして決めてください。

設計終極荷重=安全係数×予測される最大荷重×応力集中係数
(4) 複合荷重

 いろいろな荷重が加わる複合荷重に対しては、以下の項目を含めた荷重を選定する必要があります。

予測される最大荷重=低周波数領域荷重(振動荷重+準静的荷重)+ランダム振動荷重+熱荷重
 

2.締結設計

(1) かみ合い長さ
  • 構造強度的に重要な部分は、1.5d(d:ボルト直径)以上必要です。
  • 一般の締結は1.0d以上必要です。
  • 取外し頻度の少ない部分、強度を必要としない部分は0.6d以上必要です。
(2) ボルト(ネジ)長さの選定
  • ナットを貫通した長さは、1.5ねじ山以上とします。
(3) ゆるみ止め

 振動、衝撃環境に対して以下のゆるみ止め防止があります。

  • ・ロックワッシャ
  • ・セルフロッキングナット(取外し回数は15回以内)
  • ・セルフロッキングスクリュ
  • ・セルフロッキングインサート
  • ・溝付ナットとコーターピン
  • ・ロッキングワイヤ
  • ・ダブルナット
  • ・ボルト、ナットを固着
(4) 異種金属

 ボルトの締結に当たり異種金属間の固定がある場合は、電食防止のため下記の表面処理を行います。

  • ・アルミニウム及びアルミニウム合金は、すべてクロメート処理、又は陽極酸化皮膜(アルマイト)、又はレジンコーティングを行います。ただし、AL1100,3003,5052,6061,6063は必要に応じ表面の洗浄で代用できます。
  • ・300シリーズとA283、および相当の耐食鋼はパッシベート処理を原則としますが、必要に応じ表面の洗浄で代用できます。
(5) 注意事項

 JISではボルトのせん断試験の実施は規定されていませんが、ボルトにせん断荷重(横方向にかかる力)がかかる状態で使用する例は多くあります。一般的にボルトのせん断強さは、引張強さの60~70%になります。しかし、使用時の状況(ボルト穴の面取り、荷重のかかり方等)に影響を受けます。そのため、ボルトにせん断荷重がかかる使用は避けるべきです。