FT図から事象の発生確率を計算するためには、以下の手順が必要です。 |
まず、ブール代数の基本則を利用して事象の重複をなくす。次に、確率計算の基礎を知る。最後にトップ事象を発生させる基本事象の最小の組合せ(最小カットセット)を決めることです。この最小カットセットの確立が発生確率であり、FT図とブール代数のどちらからでも求められます。 |
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1.ブール代数の基本則を利用して事象の重複をなくす |
FT図は、製品の上位の故障・事故(頂上事象)から、下位の原因(基本事象)へとトップダウン的に展開していきます。そのため、展開の過程で同じ基本事象がいろいろなところに出てくることがあります。この基本事象の重複により、事象間の関係が読み取れなくなることがあります。このようなことを避けるために、ブール代数の理論を用いてFT図を変換し、わかりやすいFT図を作ることが必要です。 |
ブール代数は以下の3つの基本則があります。 | |
(1)幅等則 | A・A=A |
| A+A=A |
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(2)吸収則 | A・(A+B)=A |
| A+A・B=A |
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(3)分配則 | (A+B)・(A+C)=A+(B+C) |
| (A・B)+(A・C)= A・(B+C) |
次に、上記ブール代数の理論に対応したFT図の変換方法とその例を説明します。 |
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-ブール代数による変換- |
(1) | 幅等則 | |
| (a)A・A=A | |
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| (b)A+A=A | |
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(2) | 吸収則 | |
| (c)A・(A+B)=A | |
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| (c)‘A・(A+B+C+・・・)=A | |
| (c)の発展として(A+B+C・・・・)と事象がいくらつながっていてもAとなります。 |
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| (d)A+A・B=A |
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| (d)‘A+(A・B・C・・・・)=A | |
| (d)の発展として(A・B・C・・・・)と事象がいくらつながっていてもAとなります。 |
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(3) | 分配則 |
| (e)(A+B)・(A+C)=A+(B・C) | |
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| (f)(A・B)+(A・C)=A・(B+C) | |
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ブール代数を用いた変換の例を以下に示します。 |
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図 ブール代数を用いたFT図の変換例 |
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2.確率計算の基礎を知る |
確率計算のための基礎事項を以下に示します。 |
| (a) | 基本事象は、「+:正常」か「-:異常」のどちらかです。確率的には正常+異常=1となります。 |
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| (b) |
基本事象は独立です。そのため、FT図に基本事象の重複がある場合は、ブール代数により重複をなくすことが必要です |
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| (c) | ANDゲートの計算式 |
| | A and B=A・B A and B and C・・・=A・B・C・・・ となります。 | |
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| (d) | ORゲートの計算式 |
| | A or B=A+Bと考えてよいでしょうか? |
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| | ここで、上式の左辺をベン図で表すと右に示すようになります。そのため、真値は重複部分を減算し下記のようになります。 |
| | A or B=A+B-A・B |
| | しかし、各々の確率A、Bが1よりも非常に小さい場合には、重複部分は小さくまた、A or B=A+Bと考えた近似値は上記真値より大きめとなり故障率の評価としては妥当であると考えられています。 |
| | ここでA= B=0.02の時、A or Bの近似値と真値を求めてみると、真値=0.0396、近似値=0.04となり、真値と近似値の誤差は、0.1%であります。 |
| | また、 A=B=0.2の時の真値と近似値の誤差は、1%となり、A or B=A+Bと考えて問題ないことがわかります。 | |
| | 以上より、A or B or C・・・=A+B+C+・・・と考えて問題ありません。但し、このときの真値は、1-(1-A)(1-B)(1-C)・・・となります。 |
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| (e) | 制約ゲートの計算式 |
| | A and B=A・Bとなります。 |
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3.トップ事象を発生させる最小の組合せ(最小カットセット)を決める |
トップ事象を発生させる基本事象の組合せをカットセットといい、その組合せの中で必要最小限の組合せを最小カットセットといいます。この最小カットセットの確立が発生確率であり、FT図とブール代数のどちらからでも求められます。 |
トップ事象に至る最小カットセットは、FT図をブール代数で表し、展開して、「+/OR」で分離された集合となります。 |
例: | 下記のトップ事象の最小カットセットは、 |
| | G1=A・(B+C)=A・B+A・Cとなります。 |
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-最小カットセットの求め方- |
最小カットセットの求め方は、2通りあります。一つは、FT図から求める方法で、他は、ブール代数により求める方法です。下記FT図の最小カットセットを求めなさい。 |
(a)FT図から求める |
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(b)ブール代数から求める |
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-発生確率の計算例- |
下記に示すFT図において、青字で示す各事象の発生確率からトップ事象の発生確率を求めなさい。 (解は赤字で示しています) |
(a)FT図から求める |
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(b)ブール代数から求める |
0.079=(0.1×0.01)+(0.02+0.005+0.008) |