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故障の影響解析(FMEA)と、故障の木解析(FTA)の活用 詳細

−演習(オーブントースター、電気シェーバー、石油ファンヒーター)−

演習目的

製品の安全を確保する手段としてFMEAが有効であることは、既に説明しました。ここでは演習を通して、みなさんが抱えている事例に対しFMEAを活用できるようになることを目的としています。
今回は、身近にある「オーブントースター」、「電気シェーバー」、「石油ファンヒーター」の例を挙げました。


オーブントースター

電気シューバー

石油ファンヒーター

演習:オーブントースターのFMEA

下記に示す展開図、回路を参考に、私たちが日常使用しているオーブントースターのFMEAシートを作成してください。作業は、「危険の程度」として「火傷」、「電気ショック」、「発火」を想定し、「危険の原因」、「危険の影響」、「調べ方」、「防ぐ方法」の順でFMEAシートを完成しましょう。第2,3回の解説を参考に進めることがポイントです。


図 オーブントースター展開図

図 3段切替式オーブントースターの回路

演習:オーブントースターのFMEAシートの作成例

ポイント「危険の程度」は、製品の故障、使用者の誤動作を想定し、その結果考えられる危険により消費者がどんな影響を受けるかを推定します。オーブントースターでは異常過熱・漏電が考えられます。そして、加熱異常では使用者のやけど、製品の発火が予想され、漏電からは、電気ショックが予想されます。

表 FMEAシート

項番 品目
(製品)
機能 危険の程度 危険の原因 危険の影響 調べ方 防ぐ方法 被害の度合 発生の可能性 リスクレベル
1 オーブントースター トースト、ホットドック、グラタンおよびフランスパンを焼く。揚げ物、焼き物の再加熱 火傷:使用者が加熱した部位に触れる 1.ヒータの加熱
2.断熱性の不足
加熱された高温部分への接触による火傷 温度マーカーの使用 1a.熱解析による高温部分の除去
1b.サーモスタットの付加
2a.熱解析により消費者が触れる部分を隔離
2b.断熱材の付加
2c.使用上の情報による消費者への注意喚起
S2 K1
2 電気ショック:使用者が高電圧電源に触れる 1.絶縁不良
2.水分の侵入
1.内部ショートにより使用者が高電圧部に触れ電気ショックとなる
2.水分の侵入によるショートにより使用者が高電圧部に触れ電気ショックとなる
ショート時のヒューズによる電源断 1a.ボンディング、グランディング設計
1b.漏電遮断機の付加
1c.露出した導電部の除去
2a.1aと同じ
2b.過電流保護機能の付加
2c.耐湿性設計(シーリング)
S2 K1
3 発火:高温部に可燃物が触れ燃え出す 1.ヒータの過熱
2.パン以外の可燃物の挿入
3.ショート
1.ヒータの過熱によりパンが燃える
2.使用者の誤った使用法による火災
3.ショートによる付近の可燃物の火災
煙の検知 1a.熱解析による高温部分の除去
1b.サーモスタットの付加
2.取扱説明書への注意喚起
3.適切な絶縁設計
S2 K1

演習:電気シェーバーのFMEA

下記に示す展開図、回路を参考に、私たちが日常使用している電気シェーバーのFMEAシートを作成してください。作業は、「危険の程度」として「怪我」、「火傷」、「電気ショック」を想定し、「危険の原因」、「危険の影響」、「調べ方」、「防ぐ方法」の順でFMEAシートを完成しましょう。第2,3回の解説を参考に進めることがポイントです。


図 電気シェーバのー展開図

図 電気シェーバーの回路

演習:電気シェーバーのFMEAシートの作成

ポイント「危険の程度」は、製品の故障、使用者の誤動作を想定し、その結果考えられる危険により消費者がどんな影響を受けるかを推定します。電気シェーバーでは、刃の破損・モーターの異常過熱・水の浸入による漏電が考えられます。そして、刃の破損では怪我、異常加熱では火傷、漏電からは、電気ショックが予想されます。

表 FMEAシート

項番 品目
(製品)
機能 危険の程度 危険の原因 危険の影響 調べ方 防ぐ方法 被害の度合 発生の可能性 リスクレベル
1 電気シェーバー 刃をモーターの動力で動かし、金属板の穴の隙間からはみ出した髭を切り取る 怪我:使用者が刃に触れる 1.外刃の破損
2.内刃の破損
3.トリマの破損
1.外刃の破損により内刃で怪我をする
2.内刃の破損により外刃が損傷し怪我をする
3.トリマの破損により怪我をする
外刃、内刃、トリマの外観チェック 設計により外刃、内刃、トリマの強度の確保 S1 K1
2 火傷:使用者が過熱部分に触れる 1.モータの過熱
2.ショート
1.モータの異常回転により発火
2.ショートによる付近の可燃物の火災
使用時の温度上昇の確認 1.過電流保護機能の付加
2.ボンディング、グランディング設計
S1 K1
3 電気ショック:使用者が高圧電源に触れる 1.絶縁不良
2.水分の侵入
1内部ショートにより使用者が電気ショックとなる
2.水分の侵入によるショートにより使用者が電気ショックとなる
ショート時のヒューズによる電源断 1.ボンディング、グランディング設計
2.耐湿性設計
S1 K1

演習:石油ファンヒーターのFMEAシート

下記に示す構造図を参考に、私たちが日常使用している石油ファンヒーターのFMEAシートを作成してください。作業は、「危険の程度」として「中毒」、「火傷」、「電気ショック」、「怪我」を想定し、「危険の原因」、「危険の影響」、「調べ方」、「防ぐ方法」の順でFMEAシートを完成しましょう。第 2、3回の解説を参考に進めることがポイントです。


図 石油ファンヒーターの構造図

演習:石油ファンヒーターのFMEAシートの作成例

ポイント「危険の程度」は、製品の故障、使用者の誤動作を想定し、その結果考えられる危険により消費者がどんな影響を受けるかを推定します。石油ファンヒーターでは不完全燃焼・燃料の発火・漏電・対流用ファンの鋭利な端部が考えられます。そして、不完全燃焼では中毒、燃料の発火では火傷、漏電からは電気ショック、鋭利な端部では怪我が予想されます。

表 FMEAシート

項番 品目
(製品)
機能 危険の程度 危険の原因 危険の影響 調べ方 防ぐ方法 被害の度合 発生の可能性 リスクレベル
1 石油ファンヒーター 開放型のストーブの一種で、対流用ファンを内蔵した強制対流方式の暖房機 中毒:不完全燃焼による中毒 1.不完全燃焼防止装置の故障
2.対流用ファンの故障
3.換気不足
CO2濃度上昇による中毒 CO2濃度の測定 1,2.安全装置の二重化
3.取扱い説明書による使用者への喚起
S4 K1
2 火傷:燃料が発火することによる火傷 1.バーナーの異常燃焼
2.対流用ファンの停止
3.過熱防止装置の故障
4.転倒スイッチの故障
1,2,3.温度上昇による燃料の発火による火傷
4.転倒時の燃料漏れによる発火による火傷
使用時の温度上昇の確認 1.2.温度上昇防止機能の付加
3.過熱防止装置の二重化
4.転倒スイッチの二重化
S3 K1
3 電気ショック:高圧電源に触れることによる電気ショック 1.絶縁不良
2.水分の侵入
1内部ショートにより使用者が電気ショック
2.水分の侵入によるショートでの電気ショック
ショート時のヒューズによる電源断 1.ボンディング、グランディング設計
2.耐湿性設計
S1 K1
4 怪我:対流用ファンの端部への接触による怪我 対流用ファンへの接触 清掃時等に鋭利なファンへの接触による怪我 鋭利な端部を目視で確認 設計により鋭利な端部を容易に認識させる S1 K1

ちょっと一言:石油ファンヒータと言うと、その危険は中毒・火傷と考えがちですが、その機能上、対流用のファンを備えており鋭利な端部を有しています。製品の機能と構造を熟知し、さらにはメンテナンス等も考慮して「危険」を考えることが重要です。