機械安全のための規格と法律、設計方法の紹介 詳細
第10回 機械安全の考え方・仕組み、各国の法令と工業規格の体系、JIS機械安全
機械安全の考え方
ISOで定義されている機械安全とは、「受入れ不可能なリスクがない」ことです。そのため、「機械安全に対する考え方」が、従来日本で考えられてきた「危険検出型システム」から、欧米型の「安全確認型システム」へと変わってきています。安全に対しての欧米と日本の考え方の違いを下図に示します。
作業現場における安全対策は、従来の防護具と作業者への教育や訓練に依存する受身の安全から、ヒューマンエラーは必ず起こると仮定し、ヒューマンエラーが事故につながらないように機械の安全設計を行い、万一の場合にも事故を越さない、事故が起きたとしても事故から発生するリスクを最小にする製品作りを目指す考え方へと変わってきています。
表 安全に対する考え方の違い(欧米-日本)
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安全規格の仕組み
今まで日本では、使用者が使い方を守れば被害は起きないという「被害ゼロ」の考え方が主流でした。しかし最近は、作る人が責任を持って安全設計に取組み、どうしたら危険の発生を最小限にするかという「危険最小」の考え方に変わってきています。製品を開発するときには、適用される法律、および安全規格を遵守することが必要です。その規格の仕組みを下図に示します。
図 安全規格の仕組み:国際規格(ISO/IEC)と日本規格(JIS)
各国の法令と工業規格の体系
各国の安全に関する法令と工業規格の体系を下図に示します。ウィーン協定によりISO規格とEN規格、ドレスデン協定によりIEC規格とEN規格とは同一内容となり、 WTOのTBT(技術の障害に関する)協定によりISO・IEC規格と各国の規格は同一内容となっている。したがって、EN規格とISO規格と各国の規格は同一内容となる。
図 安全の法令と工業規格の体系
JIS機械安全
1.基本(A)安全規格(基本的な安全の概念および原則)
- JIS B 9700-1,2:機械類の安全性-設計のための基本概念(第1部:基本用語、方法論、第2部:技術原則)、ISO 12100-1,2
- JIS B 9702:機械類の安全性-リスクアセスメントの原則、ISO 14121,EN 1050
2.グループ(B)安全規格
- JIS B 9705-1:機械類の安全性-制御システムの安全関連部(第1部:設計のための一般原則)、ISO 13849-1,EN 954-1
- JIS B 9707:機械類の安全性-危険区域に上肢が到達することを防止する安全距離、ISO 13852,EN 294
- JIS B 9708:機械類の安全性-危険区域に下肢が到達することを防止する安全距離、ISO 13853,EN 811
- JIS B 9709-1:機械類の安全性-機械類からの放出危険物質による健康リスク低減(第1部:原則)、ISO 14123-1,EN 626-1
- JIS B 9709-2:機械類の安全性-機械類からの放出危険物質による健康リスク低減(第2部:検証手順)、ISO 14123-2,EN 626-2
- JIS B 9711:機械類の安全性-人体部位の押しつぶし回避するための最小隙間、ISO 13854,EN 349
- JIS B 9706-1:機械類の安全性-表示、マーキングおよび作動(第1部:視覚、聴覚および触角の要求事項)、IEC 61310-1,EN 61310-1
- JIS B 9706-2:機械類の安全性-表示、マーキング゙および作動(第2部:マーキングの要求事項)、同上-2,同上-2
- JIS B 9706-3:機械類の安全性-表示、マーキングおよび作動(第1部:アクチュエータの配置および操作の要求事項)、同上-3,同上-3
- JIS B 9713-1:機械類の安全性-機械類への常設接近手段(第1部:昇降設備の選択)、ISO 14122-1
- JIS B 9713-2:機械類の安全性-機械類への常設接近手段(第2部:作業用プラットフォームおよび通路)、ISO 14122-2
- JIS B 9713-3:機械類の安全性-機械類への常設接近手段(第3部:階段、段はしごおよび防護柵)、ISO 14122-3
- JIS B 9713-4:機械類の安全性-機械類への常設接近手段(第4部:固定はしご)、ISO 14122-4
注)「JISハンドブック72機械安全」参考
グループ安全規格(B企画)の国際規格とJIS規格の例を右表に示します。この表に示すように国際規格のJIS化は全体として遅れ気味であります。
表 グループ安全規格(B規格)の国際規格とJIS規格の例
分野 | EN規格 | ISO/IEC規格 | JIS規格 |
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非常停止装置 | EN ISO 13849-1 | ISO 13849-1 | JIS B 97051 |
EN ISO 13849-2 | ISO 13849-2 | - | |
EN 418 | ISO 13850 | JIS B 9703 | |
EN 574 | ISO 13851 | - | |
感圧保護装置 | EN 1760-1 | ISO 13856-1 | - |
EN 1760-2 | ISO 13856-1 | JIS B 9715 | |
安全距離 | EN 294 | ISO 13852 | JIS B 9707 |
EN 811 | ISO 13853 | JIS B 9708 | |
EN 349 | ISO 13854 | JIS B 9715 | |
EN 999 | ISO 13855 | JIS B 9711 | |
保護具、ガード | EN 1088 | ISO 14119 | JIS B 9710 |
EN 953 | ISO 14120 | JIS B 9716 | |
EN ISO 14122-1 | ISO 14122-1 | JIS B 9713-1 | |
EN ISO 14122-2 | ISO 14122-2 | JIS B 9713-2 | |
EN ISO 14122-3 | ISO 14122-3 | JIS B 9713-3 | |
EN ISO 14122-4 | ISO 14122-4 | JIS B 9713-4 | |
指示、マーキング | EN 61310-1 | IEC 61310-1 | JIS B 9706-1 |
EN 61310-2 | IEC 61310-2 | JIS B 9706-2 | |
EN 61310-3 | IEC 61310-3 | JIS B 9706-3 | |
EN 61496-1 | IEC 61496-1 | JIS B 9704-1 | |
- | IEC 61496-2 | JIS B 9704-2 | |
EN 61496-3 | IEC 61496-3 | JIS B 9704-3 | |
振動、衝撃 | EN 1320 | - | - |
EN 1033 | - | - | |
EN 1229 | - | - | |
EN 13490 | - | - |