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技術研究所外部評価制度 詳細

平成20年 第5回技術研究所外部評価の結果のご報告

 平成20年9月17日(水)、第5回技術研究所外部評価委員会を開催いたしました。外部評価委員は委員長に松野建一日本工業大学教授工業技術博物館長をはじめとする産・官・学の計5名の方々でした。今回は平成20年度から実施している研究テーマと、平成21年度から新たに開始されるテーマを対象に、それに対する中間評価、事前評価として実施いたしました。
 以下に研究テーマに対する委員からのご提言、あるいはご質問と、それに対する担当者の対応を記載いたします。

 

(1-1)標準技術活用による生産支援に関する研究:ポータルコラボレーション型生産支援システムの研究

(研究担当者:木村利明)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○中小企業が利用する現場を想定したポータルコラボレーション型生産支援システムの研究は技術的なスペックの高さを追求するだけでなく、実際に中小企業の対人、対現場に導入させるための方策、システムの普及を図るための体制等を考慮したものとなるのか。

→背景として、新規工作機械には遠隔保守診断システムなどが整備されているが、旧型工作機械は不十分であり、包括的な保守・運用支援技術が課題である。本研究はここがターゲットである。また、本成果は(1)~(3)の通り、中小企業への導入も考慮している。(1)ORiN協議会が開発したORiNなどの既存標準技術により投資効果を高める。(2)デジタル化されたデータのみならず、紙図面、機械現物などの高画質画像を遠隔地間で共有表示する機能を設ける。(3)ASP型システムとすることで、工場側の特別なインターネット装置を不要にする。なお、普及は標準技術活用ビジネス小研究会が中心となって行う。

○工作機械の操作が未経験な被試験者に対して工作機械操作の遠隔操作支援の実験を行った結果、システム利用前後で約24%の作業時間短縮効果を得たとあるが、最終的にはもっと高い効率を得られそうか。

→工作機械の操作がまったく分からない学生でデータを取ったものであり、システムの実用化が見えてきた段階で実際の作業者に使用していただき効率等の実証試験をしたい。

○情報セキュリティーの面の検討はしているのか、またあらゆるメーカに対応したOSの汎用性はあるのか。

→情報セキュリティー面では、ASPサーバ側にVPN機能を設けて、工場側企業のイントラネット使用を基本としたい。工作機械メーカや顧客などと接続する場合は、工場側企業が時限的アカウントを発行し、さらに工場側の接続機器の制限ができる機能を設ける。

 

(1-2)標準技術活用による生産支援に関する研究:シミュレーションによる生産システム構築効率化と品質向上の研究

(研究担当者:日比野浩典)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○シミュレーションで品質保証をある程度、明確にするという研究と見たが、どういう品質問題を明確にしようとしているのか。

→寸法、形状のチェックのための計測技術ではなく、最終組立工程におけるネジの締め忘れ、違う部品が組み付けられている、といった本来あるべきものができているかという目視型の画像検査である。

 

(2-a)計測技術高度化に関する研究:幾何形状の信頼性向上に関する研究

(研究担当者:大西 徹・高瀬省徳)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○実際にさまざまな現場の環境下で、さまざまな部品を測定した場合、明確に温度変化があり、どこの部分がとれだけ寸法を補正すべきかという具体的な補正すべき公的な指針が出せるのか、出せなければ研究が有効に活きない。

→これまでの研究により三次元測定機付属の温度補正機能では対応しきれないケースが見えてきた。例えば、温度ドリフトは、温度補正に含まれない、三次元測定機の構造体などの熱膨張の影響による誤差で、この誤差は温度測定により補正が可能となり、今までの半分以下にすることができる。オールマイティーな答えは出せないが、より良くなる方向は示すことができる。

 

(2-b)計測技術高度化に関する研究:表面層の機械的特性評価の高度化に関する研究

(研究担当者:藤塚将行・山口 誠)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○研究対象の材料はすべて延性材料なのか、他に脆性材料なども含まれるのか。

→研究対象の材料はすべて延性材料なのか、他に脆性材料なども含まれるのか。

○薄膜の評価にはAE(アコースティックエミッション)を利用した検討も行われており、そのような評価を視野に入れているか。

→AEが利用されていることは認知しており、今後それによる評価との比較も行っていきたい。

○干渉、共焦点、ラマンはそれぞれで測れるのか、また、その操作の切り替えは簡単にできるのか。

→顕微鏡は試験前後の確認を行うためにシステムに内蔵されたCCDと入れ替えて使用しており、同時に2台のコンピュータを立ち上げることで、それぞれ簡単に切り替え・観察ができる。

○寸法と荷重はどのようにチェックしているのか。
荷重については要所だけでも構わないので、分銅か何かで周期的にチェックする方がよい。

→硬度計に付属しているガラス標準片を用いて検定校正している。通常はサンプルが正しいとして校正している。

○ラマンシフトの検定はどうしているのか。→絶対波数の校正には、ネオンランプのスペクトルを用いている。日常の校正では、取扱いの容易さから、シリコン、ダイヤモンドなどによって校正を行っている。固体を対象とした通常のラマン測定においては大きな問題はない。
○光が当たってサンプルの温度が上昇した場合、どう対処するか。→光が当たることによるサンプルの温度上昇はしばしば問題となっている。測定に用いる励起光のパワーを変化させながら、ラマン測定を行い、スペクトルの変化が観察されない光パワーを用いて測定を行うようにしている。
 

(3)加工技術高度化に関する研究:ガラス加工用バインダレスcBN工具の成型に関する研究

(研究担当者:飯塚 保)
提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○硬脆材料の超精密加工技術の開発において、フライカットによって正面切削の数十倍の切り込み量で延性切削を実現したが、鏡面は得られなかったとあるが、この理由はクラックなのか、あるいは工具の振動の痕が残ったものか。

→最終的には工具の先端の滑らかさが転写しているものと思われる。cBN側で滑らかな先端形状を作れなければ、フライカット形式で鏡面切削は得られないということが分かってきた段階である。

 

(4)研究全体に対する指摘

提言、または質問事項提言、質問事項に対する対応等

○いずれのテーマもおもしろいアイデアを実用化したいという意欲は分かるが、将来、研究成果が完成しても実際に使えるかどうか疑問なものも見受けられる。製品化してもらえるように企業と話を詰めて、研究だけに終わってしまわないようにしていただきたい。

→実用化窓口は非常に重要な問題であるとの認識はある。今回、提案している研究テーマ7つのうち、4テーマについてはすでに企業と一緒に研究を進めている。

○研究テーマは1~2年を研究期間としているようだが、実際は継続して4~5年になっているものが多いので、ある程度、研究を行った時点で整理する必要がある。

→今後、留意していきたい。

○研究事業はどこまでいったら完成とするのか、目標が見えるようにして欲しい。

→目標の箇所にゴールはどこまで、ということを記述していきたい。

いただきました貴重な提言、ご意見を今後の研究の遂行に生かして行きたいと存じます。