調査研究報告書 詳細
日本自動車メーカーの海外展開と国内基盤強化の方向性
報告書No. H20-3
発行年月 : 平成21年3月
【主要目次】
序章 本調査研究の目的意識と背景
第1章 国内基盤強化に向けた環境対応技術・素材の方向性
第2章 海外進出先の支援受け入れ体制の現状と方向性
第3章 マザー工場制の現状と方向性
第4章 国内自動車メーカーの生産管理方式の現状と課題
終章 日本自動車産業のグローバル化と国内基盤強化の方向性
【概要】
日本自動車産業を巡る環境は近年急速に変化している。このような状況下で日本自動車メーカーが競争優位を維持するための取り組みには、さまざまの可能性があるが、本調査研究はグローバル化に対応した国内基盤強化の方向性として、環境への対応技術、海外生産拠点に対する支援の在り方、望ましい生産管理方式を論じた。21世紀の競争軸の一つである環境への対応技術では、環境対応型自動車の技術課題を車両、電池、航続距離、コスト、インフラ、信頼性の面から検討し、その技術課題のブレークスルーのために、日本の製造業がこれまで培ってきた先端的な要素技術の開発が層となって積み重ねてきた自動車産業の土壌こそが重要であり、それが今後とも日本の自動車産業の競争優位を導く基盤であると指摘している。日本の自動車メーカーの生産管理方式の現状と課題では、全国各地の販売会社と需要動向に関する情報交換を多段階で行いながら生産計画を策定していくが、生産計画の策定には自動車メーカー間で相違があるという。また、部品サプライヤー、自動車メーカー、販売会社それぞれで流れる時間軸が異なっており、生産・販売活動の中に流れる複数の時間軸を認識し、全体のバランスを考慮しながら状況依存的にそれらを戦略的に組み合わせることの必要性を提起した。
また、グローバル市場の拡大に伴った対応策として本報告書では、日本自動車メーカーの海外支援について分析した。一般的に「マザー工場制」として知られる支援方法では、工場の生産準備の支援段階を起点とするが、その後開発・生産の現地化と自立化が進展していったという。しかし、グローバル化の進展に伴う海外生産拠点の増加のなかで、従来型のマザー工場制では限界が生じることとなり、全世界の生産拠点の多様性を活かした技術支援・協力関係の構築が必要となっていると結論づけている。一方で、海外生産拠点に対する支援が従来とは異なる形をとるようになった。トヨタのグローバル生産推進センターのように、部品メーカーも含めて、少なからぬ自動車関連メーカーがこうした支援体制の新たな取組を開始しているが、現在ではそれら企業の多くが必ずしも従来型親工場制を完全に否定しているわけではなく、海外拠点の自立化への道を模索していることを指摘した。