調査研究報告書 詳細
デジタル家電産業におけるグローバル活動の新展開と国際競争力
報告書No. H20-2
発行年月 : 平成21年3月
【主要目次】
序 章 調査研究の概要と本報告書の狙い
第1章 日本の電機企業の再生にむけて
第2章 サプライヤー関係のダイナミズム
第3章 歴史的考察 ― わが国AV機器産業のグローバル展開からの考察
第4章 デジタル家電産業におけるビジネスモデルによる競争
第5章 わが国デジタル家電産業のグローバル化と経営戦略
第6章 産業比較・自動車産業からの考察
第7章 国際比較 ― 台湾デジタル家電産業との比較からの考察
第8章 わが国デジタル家電産業とビジネスモデル
第9章 わが国デジタル家電産業のグローバル展開の現状 ― 中国事業を中心に
終 章 我が国デジタル家電産業の在り方と今後への示唆
【概要】
デジタル家電産業を取り巻く事業環境は、「リーマン・ショック」以降に激変している。デジタル家電は、従来から生産量の拡大と価格下落が並行して起き、さらにグローバル競争に曝されている事業分野である。この価格下落とグローバル競争の激化という厳しい事業環境に、100年に一度と言われる金融危機の影響が、需要減退とさらなる価格低下という悪影響を世界的規模でもたらしている。この厳しさを増す事業環境下で、日系電機メーカーとして委託生産の拡大などによるコスト削減や事業の再構築が緊急の課題として求められている。
自動車メーカーや電機メーカーでは、日系アッセンブリーメーカーの海外進出が進んでおり、特に近年では中国への進出が盛んである。これまでの中国進出は汎用化した製品や低付加価値な製品を中国の低コスト労働力を活用し、規模の経済性を活かすことが主流であったといえる。一方、デジタル家電産業は国内生産が中心となっており、垂直統合型ビジネスモデルに日系電機メーカーの競争優位の源泉があるといわれてきた。自動車産業は、垂直統合型ビジネスモデル採用し、国際競争力を保持したままグローバル展開を行っている。一方で、かつて垂直統合型ビジネスモデルに競争優位の源泉があったと思われる白物家電産業及びAV機器産業は、海外進出する中で垂直統合型から水平分業型ビジネスモデル(本報告書では「企業間工程分業」)に移行し、国際競争力を失っていった。最近では、液晶テレビの組立工程の生産拠点にみられるように最先端製品でも中国進出、特に消費地隣接型での生産拠点の進出がみられるようになった。しかし、安易なグローバル展開は、国内生産で保持している垂直統合型ビジネスモデルでの優位性を奪いかねないといえるだろう。
現時点では「垂直統合型ビジネスモデル」で競争力を保持しているデジタル家電産業であるが、これらの事業や製品においては今後どのようなビジネスモデルを採用し、グローバル展開を行えば、国際競争力を保持し続けることが出来るのであろうか。デジタル家電事業を手がける日系電機メーカーにとっては、ビジネスモデルを再検討し、従来と異なる海外進出のあり方を模索する必要があるといえる。
本報告書は、上記の認識と問題意識に立って調査研究の行った成果であり、わが国のデジタル家電産業の国際競争力強化と新しい時代のグローバル展開のあり方について提言を行っている。