調査研究報告書 詳細
アメリカンイノベーションにみる軍=学=ベンチャーの突破力
報告書No. H29-3
発行年月 : 平成30年3月
【報告書目次】
はじめに:スタートアップ振興の「土俵技術」(platform-technology)問題
1章 土俵転換的技術を先導するDARPA等の米国軍事技術開発
1)半導体集積回路・周辺技術
2)インターネット
3)GPS
4)広義ロボット(〜AI)
2章 “軍民両用技術”の世界拡散を下地とする米国企業優位と軍事深化
――土俵転換的(Transformative)プラットフォームへの貢献
1)米国企業の世界独占的リーダーシップ
2)軍事技術開発の深化
3章 戦後ハイテク・ベンチャーへの視点
文献
(付)バックグラウンド資料
[概要]
米国の政府・軍が、個別のテクノロジやそれを担うスタートアップへのテコ入れを超えた、大きな「枠組、土台」を、産学まで巻込むかたちで用意していった点を分析した(委員会を設置せず、研究員のみによる基礎的調査)。枠組としては一般的な諸制度等も無視できないが、往々にして一般論に傾きがちなので、あえて個別の具体事例を伴う「技術的な枠組・土台」に絞り込んで観察した。目次に掲げたように、半導体IC、インターネット、GPS、広義ロボット(~AI)を事例として観察した。結果は以下のとおり。
今回強調した点は、単に軍との関係で個別技術の開発が促進されたという点ではない。むしろ重点は、米国の軍産学が、軍・政府のテコ入れ成果であった政府所有技術=インターネットやGPSを、世界に積極的に無償開放し、普及を図った点にある。すなわち彼らは主に冷戦後の世界を「包摂する」意図を持って、それら技術のGLOBAL化を積極的に推し進めた。かつ、米国の軍産学にとって、当時「日本問題」は深刻な問題であり、日本叩きの面も含んでいた。すなわち、グローバルな「新ビジネス発生の技術的プラットフォーム」(土俵:競技トラック)を作った点が、最大のポイントである。
PCが世界に爆発的に普及したのも、インターネットとの関係からであったし、そこにおいてWin-telと呼ばれるマイクロソフト(OS)とインテル(MPU)の独占も、ネット普及によってグローバルな大きさを持つようになった。それに続くところの、今日のGAFAなども同様である。90年代以降、電子情報分野の米国企業が、かなり短期間に世界大の独占的リーダーシップを掌握できるようになったのは、以上の事情が大きく作用している。
報告書ではそのほか、米国政府・議会による多年にわたるベンチャー振興策についても観察した。