調査研究報告書 詳細
IT革新を軸にみたわが国銀行業の問題と可能性―米銀との対比のもとで―
報告書No. H11-4
発行年月 : 平成12年5月
Ⅰ 主要目次 | |
1. | IT投資を競争力強化に結びつけた米国銀行業 ―― マクロ鳥瞰 |
2. | IT革新で問われる邦銀の事業革新 ―― リテイル中心に |
3. | IT革新で問われる邦銀の事業革新 ―― ホールセール |
4. | わが国の銀行事業と金融情報システムにおける可能性と課題 |
(1) | 可能性 |
(2) | 課題 |
1) | 事業変革方向を明示すべき ―― ビジョナリ・カンパニの対極にある邦銀 |
2) | 中身を問うべき邦銀IT投資 |
3) | 新リテイル戦略とそのためのIT投資というセットでの明示を |
4) | まず差別化戦略を; 次に手段としてITを; ITフル活用にはまず人材活用を |
5) | IT時代に望まれる金融機関の人材マネジメント変革 |
<重要と考えられる若干の業界・国における取組み提言> | |
<付論> 米銀IT革新の土台としての経営革新 ― 80年代業績悪化と90年代の回復 |
Ⅱ 概要 米銀が90年代に収益力を回復した背景にはITを事業革新と結びつける努力があったが、邦銀では事業革新の方向が不透明で特色がなく、ITの効果的利用が後れる原因になっている(第1章)。邦銀はリテイル・バンキングでは生残る可能性があり、コンビニ・バンキング等で日本的特色も追求しているが、課題も多く、特に個人資産運用サービス向上のための顧客データベース拡充と商品開発力向上は重大である(第2章)。ホールセール・バンキングでは従来のような大企業向け大口融資が細り、収益性も悪いのに対して、投資銀行事業(M&A仲介、トレーディング、社債/株式引受、証券化)が中心とならねばならないが、この分野ではリージョナルな生残りは難しく、グローバル競争力が不可欠である。その際必要なのは多彩な投資銀行業務の中でもいかなる点を自行の特色とするのか、他行と差別化する点である。しかし邦銀はホールセールでもリテイルでもビジョンすら不透明かつ横並び的なままである(第3章)。他方、リテイル、ホールセールをつうじて従来ITを競争力向上に結びつけるのに欠けていた点が昨今改善傾向にあり、日本企業の強みが発揮される将来可能性も勘案した。しかしなお邦銀のIT利用に際して課題が次のように残されている:何よりまず自行の特色ビジョンを明らかにし、それに奉仕させるかたちでIT投資内容における特色やメリハリを出し、差別化部分(主にプロフィットセンタ)とそうでない部分(主にコストセンタ)を明確にすべき。そして差別化のため独自内容を持ったIT投資を行い、その他部分は共同利用するといった戦略を実行すべきである。それには個別事業(プロジェクト)実行班が投資決定の責任役員と直接相対しながら、決定が進むといった意思決定方式の導入が必要であり、同時に現在の企画部の廃止ないし任務変更といった組織改変が必要であろう。その他総じて5点の課題を指摘した。(1)事業変革方向を明示すべき――ビジョナリ・カンパニの対極にある邦銀、(2)中身を問うべき邦銀IT投資、(3)新リテイル戦略とそのためのIT投資というセットでの明示を、(4)まず差別化戦略;次に手段としてIT;ITのフル活用にはまず人材活用を、(5)IT時代に望まれる金融機関の人材マネジメント変革(第4章)。最後に、<重要と考えられる業界的・国家的取組>の提言として、金融商品に関するデータを体系的に揃えたデータベース構築とそのオープン性確保、等々を指摘した。また<付論>として米銀が90年代にITを事業変革と結びつけて収益力を向上させた点の分析を付した。 |