Ⅱ |
概要 |
① |
わが国半導体大企業は「強み新生」のため、もっと前向きで大胆な再編・変革に乗り出すときである。半導体は製造業では稀有な、有望成長産業だが、従来の平均トレンドである年率13-15%の成長は今後期待できない。膨大な関連技術開発もますます難度と広がりを持ってきて いる。どうみても従来的成長を折込んだ、各社「横並び」の踏ん張りでは持たない。 |
② |
わが国半導体事業が抱える最大の問題は、"慢性的に"米欧アジア企業より利益率が低い点で、改善に時間がかかり過ぎている。強み新生のための反撃基地として「再編」が必要であり、そのうえで「業務を革新」し、さらに「製品技術面の強み創出の仕掛け」が必要である。現状態勢のままのガンバリズムだけで、システムLSI(SoC=システム・オン・チップや、SiP=システム・イン・パッケージ)を軸に、自然浮上・復活するというシナリオは現実性がない。 |
③ |
《再編》企業ごとの製品特色、差別化を際立たせるには、事業再編が必須である。単体DRAM等汎用メモリー、システムLSI、ファンドリー (ブランドなき受託製造)事業に3大別して、それぞれの分野で企業ポジションの明確化が必須である。・単体DRAM事業(略)・システムLSI事業(略)・ファンドリー事業(略) |
④ |
《組織のしくみ変革1》 システムLSIではチップの上位設計で有能な人材が決定的に不足している。人材育成はむろん中期的課題だが、同 じ人員でも受注成功事例の積み増しに向けた仕掛けをすべきであろう。例えば受注案件ごとに設計チームが、企業をまたいで機動的に合弁する「バーチャルカンパニー」のような、組織機構上の工夫を進めるべきだろう。 システムLSIのエンジン等は、今後も海外外注なり、ARMやクァルコムからのライセンス等なりが続こうが、その図式を放置するだけなら、付加価値を海外にもっていかれるばかりである。コスト圧力と付加価値中間搾取の板挟みで薄利なシステムLSI事業は、ますます薄利少売になろう。少しでも国内で取れる付加価値を高める必要がある。 システムLSIでの各社究極のねらいはデファクト的コア・エンジンを社内創製することになろうが、並行して、個々の案件の「受注に成功」して顧客ニーズの吸収と成功体験を積み増す"仕掛け"が必要だろう。要は企業をまたいで上位設計人材の融通性(スケーラビリティ)を実現せねばならない。それには組織の仕組みを変え、チーム制を徹底し、受注案件ごとにチームが企業をまたいで合弁を組む「バーチャルカンパニー化」が有効だろう(現在の社内半導体分社はそれ自体、一種の事業持株会社的になる)。 |
⑤ |
《組織のしくみ変革2》 工場部門は既に直接・間接に、ファンドリー化(自立経営責任)が進んでいるが、今後一層徹底せねば国内で生き残れないだろう。 |
⑥ |
《ビジネス慣行変革》 さらに80年代に賞賛されたビジネスプラクティスも革新が必要である。わが国取引慣行は、競争力涵養の視点から、90年代以降はむしろ不適切化した。製造装置購買、人事、知的財産権管理等に関する「慣行」基準を透明化せねば、B2B電子商取引も,ベンチャー輩出・活用も進まない。 |
⑦ |
《「科学呼応産業」化》 以上の変革でもなお、積極的な「強み」創出には不充分だろう。短期的には国の支援策も重要。今後は、(1)デバイス応用のシステムやサービスを巻込んで、チップ設計に至る、「システム方面の実験」支援措置、(2)装置・材料企業が"実質的提唱者の立場で"、プロセスモジュール単位の「組合せ実験・検証」を行うことを容易にする支援措置、が期待される。 |