Ⅱ.概要
本調査研究では、ITの影響を様々な面から検証しているが、消費者、労働者、企業(組織)の経済主体別に影響を整理することによって、問題点を浮き彫りにすることが可能になった。すなわち、ITによって様々な恩恵がもたらされている反面、過大な期待によってITの活用と普及において様々な障害も生じていることが分かった。とりわけ大きな誤解は、消費者のセルフサービス機能を利用して企業業務の効率化が進み、ITを利用した新しいサービスが普及するとみられていた点にあった。実際には、消費者の選択と民間ビジネスの間には大きなギャップがある。このため、米国では、ITバブルの崩壊に伴い、独占の表面化、企業の資本政策、会計システムに対する信頼の喪失などから、民間ビジネスによるITの普及が行き詰まりをみせている。そうした状況を踏まえ、本調査研究では、民間ビジネス至上主義の米国モデルとは異なるIT政策を主張している。具体的には、1)公共財としてのIT政策(適正な競争、システミックリスク対策、インフラ企業の倒産リスク・チェック、値下げ原資への課税)、2)情報・コンテンツ供給の公共化(国民全体の知的能力支援データベース構築、ITボランティア支援、ITビジネス支援の検討、そのための課金や課税の検討)などを提言している。 |