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「湾岸危機の経験にみるエネルギー安全保障の 制度設計と実効性 」

エネルギー政策研究会 「湾岸危機の経験にみるエネルギー安全保障の 制度設計と実効性 」ご報告
開催日時 2022年3月2日(水)15:00~17:00
場所 WEBシステムにより開催(CISCO Webex)
テーマ 「湾岸危機の経験にみるエネルギー安全保障の 制度設計と実効性 」
内容 【講演1】機械振興協会経済研究所 所長 林 良造 
【講演2】国際エネルギー機関(IEA)エネルギー市場・安全保障局長 貞森 恵祐 氏
【パネルディスカッション】
 パネリスト
  (一財)日本エネルギー経済研究所 専務理事 小山 堅 氏
   国際エネルギー機関(IEA)エネルギー市場・安全保障局長 貞森 恵祐 氏
   ICEF運営委員会議長、元国際エネルギー機関(IEA)事務局長 田中 伸 氏
 モデレーター
   機械振興協会経済研究所 所長 林 良造



 本シンポジウムは、機振協シンポジウムとして開催されたものです。開催当日は、約100名のご参加を得ることができました。講師・パネリストの方々、ご参加頂いた方々には心より御礼申し上げます。


【講演の概要】


【講演1】「石油をめぐる国際的危機への対応(エネルギー政策研究会報告)」では、当経済研究所所長林より、1990年に勃発した湾岸危機において、約半年に及ぶ緊張を経てクウェート解放のための軍事攻撃に合わせて初めての共同放出が成功裏に行われたその歴史的背景について、第一次石油ショックとIEAの設立、第二次石油ショック、逆石油ショックと先物市場の現出、戦略備蓄の共同放出など、湾岸危機前後の経緯について時系列に沿った報告が行われた。

【講演2】「エネルギーをめぐる最近の環境変化と課題」では、国際エネルギー機関(IEA)エネルギー市場・安全保障局長の貞森氏より、「Net Zero by 2050 Scenario」について、その実現に横たわる種々の課題、さらに今般のロシアによるウクライナ侵攻による欧州へのエネルギー供給問題等について、IEA本部のあるパリから早朝(現地時間)にも関わらずご講演頂いた。

【パネルディスカッション】林所長のモデレートにより、日本エネルギー経済研究所専務理事小山氏、国際エネルギー機関(IEA)エネルギー市場・安全保障局長貞森氏、ICEF運営委員会議長、元国際エネルギー機関(IEA)事務局長田中氏の3名のパネリストから、前半の2つの講演内容への感想も含め、「Security of Clean Energy Transitionの課題」をテーマに今後のエネルギー安全保障について、短期的課題と長期的課題について地政学的視点も含め活発なディスカッションが展開された。その結果、長期的には再生可能エネルギー等、非化石由来のエネルギーを中心とする脱炭素社会への移行が目指されているものの、石油や天然ガス依存から脱炭素社会に移行する期間において、不安定な国際政治を前提に安定的エネルギーの確保するためのbridge energiesの選択、技術革新の加速、加えて、共に天然資源大国であるロシアとウクライナの危機的状況に対して、エネルギー安全保障の観点からどのようなcrisis managementが可能なのか、IEAにおける中国、インドの位置づけ、原発の役割を含むエネルギー転換への各国のニュアンスの違いなどを踏まえ、エネルギーセキュリティとグローバルエコノミーのバランスを維持する新たな仕組み(システム)づくりが早急に必要であるとの認識で一致した。また、2050NetZeroの鍵となる再エネについては、欧州では特に洋上風力発電と水力発電のミックス等がエネルギーの地産地消としても有効な手段になってきていることが提示された。

 最後に参加者からも有意義な質問があるなどシンポジウムは盛会裏に終了した。