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機械製品に対する安全要求と設計方法

第7回 個別安全要求と設計-応力腐食割れ- 

 大気による金属の腐食には、図1に示すようにマイグレーション、ピンホール、応力腐食割れ等があります。ここでは応力腐食割れに対しての安全要求と設計方法を解説します。

図1 大気による金属腐食の例
 
 応力腐食割れとは、装置、機器を組み立てるときに行われる溶接や冷間加工(室温で加工するプレス成形、曲げ等)による残留応力及び使用時にかかる外部応力により、材料に引張応力がかかりこれと特定の環境の腐食作用とによって材料に割れをもたらす現象です。通常は金属材料について生起しますが、プラスチック等の非金属材料についても環境脆化の一環として起こりうる現象です。図2に応力腐食割れのメカニズムを示します。

図2 応力腐食割れのメカニズム
 
 応力腐食割れは、オーステナイト系ステンレスの各種形態の腐食事例の中で、最も多い事例件数を占めています。したがって、鋼にとって使用上の最大の問題点であるとされています。応力腐食割れを引き起こす要因として図3に示すような「材料の応力腐食割れ感受性(材料特性)」「継続的な引張応力の存在」「環境腐食」の3点が考えられています。しかし、このうち一つでも除去できれば、応力腐食割れは生じないと考えられています。図4に黄銅管の応力腐食割れの拡大写真を示します。

図3 応力腐食割れを支配する3要素

図4 黄銅管の応力腐食割れ

-要求項目-

 機械製品中で構造強度を有する部位の設計に使用する材料は、その使用目的を考えて、応力腐食割れ耐性の高い合金を使用する。

-設計方法-

1.材料に関しては、
  • 結晶粒を貫いて割れが進行する粒内割れに対しては、ニッケル含有量の高い鋼種や珪素を添加したUSXM15J1等を使用する。
  • 結晶の粒界に沿って割れが進行する粒界割れに対しては、SUS304L、316L、321、347等の耐粒界腐食鋼を使用する。
図5に低炭素鋼の応力腐食割れを防止するための溶接技術を示します。


2.上記以外に関しては、
  • 応力除去熱処理(850~950℃加熱後徐冷)を実施する。
  • ショットピーニングの施工により表面引張応力を低減させる。
  • 電気化学的防食法(アルミ合金処理)を実施する。
  • 加工・組立て時には、最小の引張応力におさえるように作業を行う。さらに、塩素イオンの濃縮を防止、材料表面を定期的に洗浄、60℃以下で操業させる対応を行う。
図6に中性塩電解液による応力腐食割れ防止の例を示します。

図5 低炭素鋼の応力腐食割れ防止のための溶接技術
(日立評論Vol.91 No.02 214-215)

図6 中性塩電解液による応力腐食割れ防止の例
(ケミカル山本)